『れいわ一揆』原一男は問う「もう一回、民主主義を考える時」

ドキュメンタリー映画『れいわ一揆』~原一男監督インタビュー

 結成3カ月で臨んだ2019年7月の参院選で旋風を巻き起こし、2人が当選して政党要件を満たす躍進を果たした「れいわ新選組」。その選挙戦を追ったドキュメンタリー映画「れいわ一揆」が九州でも公開中だ。「ゆきゆきて、神軍」などで知られる原一男監督の作品。非正規労働者、障害者、「女性装」の大学教授…。政治の素人たちの闘いには、市民自らが声を上げる民主主義の原点がのぞいている。

 「2019年の参院選がれいわ新選組のピークだったでしょう。今はあれほどの勢いは見られません。だけど、あの熱狂の中にいた人たちにはその時、あなたは何を信じたんだ、と言いたい。あなた自身が信じたものを、あなたの中でもう一回、突き詰めて考える必要があるんじゃないの、と問いたいと思います」

 「新型コロナウイルス禍で劇場上映が遅れましたが、今、もう一回、民主主義とは何かを考えてみようよ、ということが、実は、『れいわ一揆』を見ていただく上で大事なテーマになっているんですよ」

 撮ったのは、馬を連れて遊説した「女性装」の東京大学教授、安冨歩さんを中心に、シングルマザーで雇い止めを経験した元派遣社員や契約解除された元コンビニ店長、公明党を批判する創価学会員、重い障害がある木村英子さんと筋萎縮性側索硬化症(ALS)の舩後靖彦さん=ともに比例代表「特定枠」で当選=ら候補者9人と、発信力でブームをけん引した山本太郎代表だ。「こんな死にたくなるような社会、変えようよ」などと、弱い立場の人たちに訴えかけ、支持を広げた。

言葉が持つスペクタクルを撮った

 「私は長い年月をかけて撮影するタイプです。前作『ニッポン国VS泉南石綿村』は撮影に8年かけました。並行して撮影していて、今秋に公開予定の『水俣曼荼羅』は撮影に15年、編集に5年かけています。だけど、『れいわ一揆』は選挙戦を撮るわけですから、撮影日数30日で4時間8分の作品に仕上げました。時間が限られるのだから、候補者たちの訴える〈言葉の表情〉を撮ろう、言葉が持つスペクタクルのようなものをたくさん撮ろうと決めて撮影に臨みました」

 選挙戦では、山本代表の歯切れよく、熱のこもった言葉が有権者をつかんでいく。「一緒に変えていこうってことですよね。一人一人自信が奪われすぎてんですよ。何もかも奪われてるってことですよね」。街頭演説会場は、熱気が充満し盛り上がる。

 当事者の訴えも聴衆の心を動かす。例えば、シングルマザーの候補者、渡辺てる子さんが一時、ホームレス状態になったり、派遣社員契約を雇い止めされたりした来歴を語り、「われわれ当事者が、ど庶民が、働く者が、貧乏人が今の日本を変えなくて誰が変える」と絶叫する。

 ALS患者の舩後さんが文字盤で懸命に伝える言葉は、その行為自体が多くのものを訴える。カメラはそんな、それぞれの〈言葉の表情〉を撮っていく。

 「言葉の表情とは、物語性でもあります。渡辺さんが自分の貧しかった頃の話をすれば、あの人の人生を語ったドラマティックな言葉として有権者に届いていく。有権者はそういう言葉を求めて、遊説先に集まって来ていたと思います」

原一男監督は振り返る。「れいわ新選組の候補者たちの『言葉の表情』を撮ろうと思いました」(撮影・佐藤雄太朗)

「馬と音楽で通じさせる」刺激的な言葉

 原監督が主に追いかけた「女性装」の安冨さんの選挙戦は風変わりだ。馬を連れて練り歩く。新宿駅の雑踏の人たちは驚いたり、楽しげに目を向けたりして騒然となる。東京駅では怒った警備員から敷地を追い出されてしまう。

 歌やラップ、鍵盤ハーモニカ、パーカッションなどの軽音楽を遊説に織り交ぜる。マイケル・ジャクソンの集団ダンスを披露する場面もある。「いろいろなものを動員し、言葉を通じさせる実験」だが、「警察に通報する」と妨害者が現れたり、ほとんど聴衆が集まらない街頭演説があったり。カメラはそうした詳細を記録していく。

 安冨さんは、「子どもを守ろう」と一貫して訴える。「システム化され、記号化され、(人々が)がんじがらめにされている」と現代都市を斬り、「奇妙に整とんされてしまった、豪華な地獄」と現代社会を評する。鋭角的で挑発的な言葉で、思考停止状態に陥りがちな人々を揺さぶり起こそうとする。「子どもたちをシステムに順応するロボットにするような抑圧から逃そう」と呼び掛ける。

 「安冨さんは、自分が究める学問を通じて、現代の問題を、大学の授業のように有権者に講義してくれていた。それも、やさしい言葉で、ですよ。中には刺激的な問題提起があって、これから子どもにどう向き合うか、今後、どう生きていくか、考え始めるきっかけをつくってくれていたと思いますよ」

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