厚労省深夜会食 国民への重大な裏切りだ

 国民から見ればまさに「ふざけるな」の一言だろう。新型コロナウイルス対策を担う霞が関の役人がこのありさまでは、怒りと同時にむなしさが募る。

 厚生労働省老人保健課の職員が先月24日、東京・銀座の居酒屋で深夜まで仲間の送別会を開いていた。午後7時すぎから計23人が順次集まり、十数人は午前0時近くまで残っていた。

 多人数での飲食は感染リスクが高いとして注意喚起しているのは、ほかならぬ政府である。東京都は緊急事態宣言が解除された21日以降も、飲食店に午後9時までの時短営業を要請している。そのさなかに深夜まで開いている店を探して予約していたという。言語道断である。

 田村憲久厚労相は「国民への裏切り行為」として、会を主催した課長らを懲戒などの処分とし、自らの給与2カ月分も自主返納する意向を示した。当然であり、これだけでは納得できない国民も少なくなかろう。

 介護保険制度を担当する老人保健課は高齢者施設を所管する老健局に属する。課員らはコロナの集団感染が全国の施設で相次ぎ、死者が出続けている現状を百も承知のはずだ。にもかかわらず、感染防止の自覚を欠いた行動を取っていたわけだ。

 昨年来、菅義偉首相が自民党幹部らと多人数で会食したり、与党議員が緊急事態宣言下に銀座のクラブを訪れたりして、世論の批判を浴びた。そんなことは念頭にもなかったのか。

 霞が関の省庁はコロナ禍もあり、多忙を極めている。慰労や息抜きの場を設けたい気持ちも分かる。ただ、それにもまして感染対策でさまざまな制約を受け、我慢を重ねているのは多くの国民である。その痛みが理解できていないとすれば、その原因はどこにあるのだろうか。

 総務、農水両省の接待問題などと照らし合わせると、国民の暮らしよりも為政者の側に寄り添おうとする官僚の体質が浮かび、気掛かりだ。この傾向は安倍晋三前政権が内閣人事局を創設し官僚人事を一元管理して以来強まり、国民不在の行政になっているとの指摘も多い。

 その意味では、不祥事の続発は国家公務員倫理の希薄化というより、構造的な「病理」と考えられる。ここで菅首相は綱紀粛正を唱えるだけでなく、首相官邸と各省庁の官僚との関係を見直し、霞が関全体が国民目線を取り戻すよう意識改革を推進すべきだと訴えたい。

 コロナ対策はワクチン接種の準備が遅れ、感染「第4波」の兆候を見せ始めた。封じ込めには国民の信頼と協力が欠かせない。政府一丸でウイルスと闘うという自らの言葉を、首相はいま一度かみしめるべきだ。

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