介護保険で手抜きリフォーム 利用者重傷…責任は

 「介護保険制度を使って設置した手すりが壊れ、高齢の母親が大けがをしました」。西日本新聞「あなたの特命取材班」に情報が寄せられた。原因は手抜き工事だった。取材を進めると、個人資産である住宅改修に行政側が積極的に関与せず、高齢者ら本人や介護職員が施工業者を選ぶ「現場任せ」の現状が浮き彫りになった。専門家は「工事内容を検査する仕組みが必要だ」と警鐘を鳴らす。

 事故は1月下旬、福岡県久留米市の一戸建て住宅で起きた。住人の女性(86)が玄関前の段差でよろめき、寄りかかった手すりが支柱から外れた。女性は転倒し、あばら骨4本、大腿(だいたい)骨1本を骨折、腎臓と肺も負傷して今も入院している。医師からは歩行器を使って生活し、1人暮らしも断念するよう言われた。

 手すりは足が弱っていた亡き夫のため、2015年に介護保険の「住宅改修制度」を使って設置した。

 女性の次女(54)=北九州市=によると、施工業者は当初、責任を否定。しかし、現場確認を求めたところ、支柱を地面に埋め込む深さがメーカー基準の半分程度など、複数の手抜き工事が発覚した。業者は非を認め謝罪したという。

 次女は憤る。「問題が起きても、泣き寝入りしている人がたくさんいるはずだ」

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 女性側は市の地域包括支援センターに相談し、福祉用具のレンタル事業を展開するこの業者を仲介してもらったという。業者は工事を下請けに外注していた。

 センターの責任者は「実績があり、普段の付き合いからも信頼できる業者だったのに」と驚く。

 仲介の現状について、福岡市の地域包括支援センターに勤めるケアマネジャーの女性はこう明かす。「公平性を考えると、信頼する業者ばかりに頼めない。紹介は現場の担当者次第だ」

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 介護保険では要支援者、要介護者が手すり設置や段差解消などの工事をすると、費用の9割が支給される。限度額は1人当たり生涯に計20万円。18年度は全国で、工事約46万件に約379億円が支給された。

 厚生労働省も施工内容の問題点を把握しており、12年度に補助事業で全国調査を実施。「品質にばらつきがある。(実績ある)業者を選ぶ制度が整っておらず、責任体制が不明確になっている」と当時から指摘していた。14年度の抽出調査では、第三者のケアマネや建築士が工事の9割で、費用や効果を疑問視した。

 ただ、厚労省は現状、事故や施工不良の本格的な集計に乗り出していない。取材に「新年度から実態把握を進めたい」とした。一方、独自に施工後の抽出調査をする広島市では、例年数件ずつ不適切な施工例が見つかる。手すりの補強が不十分な事例が多いという。

 高齢者住宅を巡る問題に詳しい横浜国立大の大原一興教授(建築学)は「工事の監理と検査は重要だ。弱い立場の人を守る福祉のアドボカシー(権利擁護)の理念で、行政は、工事が適切かチェックする担当者の育成や優良業者の登録制度創設などに取り組むべきだ」と提起する。 (水山真人)

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