「まん防」初適用 仕組み周知し混乱回避を

 緊急事態宣言に準じる法的措置が感染再拡大に歯止めをかける「切り札」となるのか。新型コロナウイルス封じ込めの取り組みは新たな局面に入った。

 政府が大阪府と兵庫、宮城両県を対象に、新型コロナ対応の改正特別措置法で新設した「まん延防止等重点措置」(まん防)を初適用することを決めた。これを受けて3府県の知事は来週から大阪、神戸、仙台など6市で、各地の感染状況に応じた独自の対策に乗り出す。

 最大のポイントは強制力を伴うことだ。知事は時短営業の要請に応じない飲食店などへ立ち入り調査や命令を行い、それでも従わない場合は罰則として過料を科すことができる。

 対策の実効性に期待が持てる半面、市民の権利が必要以上に制約される懸念もある。そこで政府と自治体に求めたいのは、「まん防」の仕組みや注意点を国民に改めて周知して、広く協力を求める取り組みだ。

 改正特措法は今年2月、衆参両院合わせてわずか4日間の審議で成立し、その10日後に施行された。国会での議論が不十分なだけでなく、内容にも曖昧な部分が目立つ。国民からは「緊急事態宣言との違いがよく分からない」との声も聞かれる。

 特に留意すべきは、知事の権限の範囲と罰則の適否に関する規定だ。例えば、知事が要請できる措置は時短営業にとどまらない。従業員へのPCR検査の勧奨、施設への入場者の整理・誘導、感染が疑われる発熱者の入場禁止など範囲は幅広く、これらも命令の対象となる。

 命令を拒むことができる「正当な理由」に関しては、事業者の経営上の都合は認められず、飲食店であれば時短営業で地域住民の暮らしに困難が生じる場合などに限定されている。

 こうした規定は、特措法の関連政令や自治体への通知の中でしか詳しく説明されておらず、国民に広く理解されているとは言い難い。知事が無理に対策を推進しようとすれば、混乱や市民の反発を招く懸念がある。

 政令で「まん防」は感染が特定の地域で広がり、都道府県レベルに拡大する恐れがある場合に適用するとされている。これに照らせば、今回の適用はタイミングとして遅れた印象が拭えず、緊急事態宣言の解除自体が早過ぎたとの指摘もある。

 政府はそうした声や今後も対象地域が増える可能性があることを踏まえ、特措法の適用と解除の基準をいま一度整理し、国民が納得できる制度にしていく努力も重ねるべきだ。

 変異ウイルスが急速に広がる中、対策が混迷するような事態はなんとしても避けたい。コロナ制圧への道は今が正念場だ。

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