「兄・高倉健」伝える17音 七回忌に合わせ句集
福岡県中間市出身の名優、故高倉健さんの妹・森敏子さん(86)=同県小竹町=が、昨年11月の七回忌に合わせて句集「飛花落花(ひからつか)」を出版した。高倉さんから「見せる句ではなく、見える句を詠め」と言われていた森さん。<炎天の漢(おとこ)を強く記憶せり><寂し寂し寂し寂しと星流る>。「難しい言葉をなるべく避けて、俳句に親しみがない人にも読みやすい句を集めた。多くの高倉健ファンに読んでほしい」と話している。
森さんは約30年前、同県の俳人、故伊藤通明さんの句に触れる機会があり、俳句を始めた。森さんは高倉さんの4歳年下の妹でかわいがられており、俳句の大会で優秀な成績を収めるとバラの花が届いた。「元気か」と電話があり、俳句や日々の暮らしを語り合った。
最後の会話は高倉さんが亡くなる約1カ月前。親戚の法事を控え、「花を供えてくれ」という電話だった。高倉さんは生前、家系図を作るなど祖先や家族を大切にした。「俳句は直接会った人から感じることが重要」。離れて暮らしていた高倉さんに関する句は詠んでいなかったが、没後「兄が家系図を作ったように、私も兄を後世に伝えたい」と、高倉さんの句を詠んだ。「兄にささげたい」と句集の出版を決めた。
<寒涙や白骨(ほとけ)濡(ぬ)らしてはならず>は、中間市の正覚寺に納骨した際の句。あるとき桜を見ていると、急に風が出て、桜吹雪の中、近づく和服姿の高倉さんを見たような気がして詠んだのが、<山々の桜吹雪の哭(な)いてをり>。
希代のスターであり、優しかった兄への思いを込めた120句が並ぶ。
四六判。104ページ。税別2800円。文學の森=092(739)8194。 (中川次郎)