被災柿畑を“復興の見晴らし台”に 朝倉が植える夢

 2017年の九州豪雨で被災した福岡県朝倉市志波地区の平榎集落で、災害前は柿畑だった標高200メートルの地を、花木に囲まれた見晴らし台として整備するプロジェクトが進行中だ。「この地を離れた人、ゆかりのある人、みんなが集い、明日への夢を語り合える場所にしたい」-。住民たちは協力し合いながら、復興への一歩を踏み出している。

 特産「志波柿」の産地で知られる志波地区。37世帯の大半が柿農家だった平榎集落を、九州豪雨で土石流などが襲った。家屋10戸が全壊・大規模半壊し、12戸が床上床下浸水する被害が出たが、住民同士で助け合い、避難したことで全員無事だった。

 災害後、集落に待ち受けていたのは、深刻な人口流出と高齢化だった。自宅を失い、集落を離れざるを得なくなった人もおり、世帯数は半分の19世帯になった。

 「このままだと集落が立ちゆかなくなる」。河川や砂防などの復旧工事が進められる中、住民たちは18年1月、「平榎復興委員会」を立ち上げ、自分たちにできる集落再生の方策を議論。見晴らし台の構想が具体化したのは、九州大の学生らとのフィールドワークがきっかけだった。

 19年11月、地元で「櫟(くぬぎ)山」と呼ばれる地へ。集落が一望でき、真っ赤に色づいた柿の木々が広がっていた。「美しいなぁ」。学生だけでなく、住民も思わず感嘆の声を上げた。復興委員会委員長を務める柿農家の日野洋さん(69)は「なんの特徴もない集落だとみんな思っていたが、人の心を引きつける魅力があることに改めて気付かせてくれた」と振り返る。

 櫟山は元々、段々の柿畑だったが、豪雨で作業道が被災し管理できなくなっていた。「見晴らし台をここに造ろう」。柿園だった土地約20アールを所有者から借り、九州大の協力や公益社団法人「国土緑化推進機構」の助成金を得て整備することにした。

 住民らで草を刈り、四季折々の木や花を楽しめるよう、サクラやサルスベリなどを植樹。3月6日には住民や小学生ら約90人が参加し、ツツジやアジサイなどを植えた。孫らと参加した住民の一人、日野佐津美さん(65)は「孫と木が成長するのが楽しみ。夫や私がいなくなっても、一緒に植えた思い出は木とともに残りますから」と目を細めた。

 見晴らし台周辺では地滑り対策工事などが進められているため、今後は工事の進ちょくを見ながら、駐車場などを整備したいという。日野委員長は「いつでも、誰でも、どこからでも安心して来て、住みたくなるような地域を目指したい。数年後、ここでみんなと花見会を開けたら良いですね」。笑顔が咲き誇る日が来ることを信じ、前へ進む。

(横山太郎)

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