地震後もコロナ下も…移り住んだ阿蘇にパワーもらう

ペンション経営・川崎久志さん(55)

 自然にほれ、人にほれた阿蘇に恩返しを―。熊本県南阿蘇村でペンションを経営する川崎久志さん(55)は、四半世紀にわたり家族で通い詰めたこの地に2年前、鹿児島市から移り住んだ。熊本地震による被害を目の当たりにし、一時は移住を諦めかけたが、夢をつなぎとめてくれたのは村民たちの郷土への愛。開業半年で直撃した新型コロナウイルス禍で苦境に立つ中、地域活動や移住相談に熱心に取り組んでいる。「地震でも失われることのなかった南阿蘇の魅力を伝えていきたい」と前を向く。

 川崎さんは鹿児島市の電力関連会社に勤める傍ら、娘2人が幼い頃から家族4人で阿蘇地域に通い続けた。約25年間、年10回のペースで訪れ、南阿蘇村でのキャンプや登山など自然に親しんだ。「市街地の自宅から阿蘇に着くと、子どもが生き生きする。自然が娘を真っすぐに育ててくれた」

 かねてペンションを経営したいとの夢があり阿蘇地域で物件を探していたところ、2016年4月14、16両日、熊本地震が起きた。

 地震から7カ月後、人口減に悩む村が主催した移住のための交流会に参加。川崎さんは長女と村に向かったが「車を進めるにつれ、心が暗くなった」。道中の御船町や西原村には、倒壊した建物や崩れ落ちた山肌、断裂した道路など傷痕が深く残る。ハンドルを握る手が重くなり、移住の気持ちが薄れかけた。

 会場に着くとそんな不安は吹き飛んだ。村民が来場者をもてなし、支え合いの精神が息づく土地柄など村の魅力を熱弁。地震で交通インフラが損壊し生活に不安があることを含め、村に都合の悪いことも包み隠さず教えてくれた。「家や店を失った人もいたのに、パワーに圧倒された。自分もあの輪に入りたいと思った」。娘2人が自立したこともあり19年6月、購入した別荘に単身移住し、9月にペンションを始めた。

 ペンションは阿蘇五岳を望む外輪山の中腹にあり、屋内外でバーベキューも楽しめる好立地。冬場にも台湾やシンガポールなど外国人客が多く訪れ、滑り出しは上々だ。

 昨春以降はコロナ禍で客足が途絶え、売り上げが数千円しかない月もあるが、この地を選んだ決意は揺るがない。有志で道の駅にイルミネーションを設置したり、鉄道の駅やキャンプ場などに手作りの椅子「ラブチェア」を置いたりして、地域の魅力アップに走り回る。移住を考える宿泊者も少なくなく、相談を受けて家探しに付き合うこともあるという。

 「自然に癒やされ、人に支えられる毎日。南阿蘇は震災前よりも魅力的になったと感じる」。村民となった川崎さんは、震災復興のその先を見つめる。

(小川俊一)

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