緊張感欠く?略称「まん防」自粛の波 政府や報道、批判受け修正 

東京ウオッチ

 大阪、兵庫、宮城の3府県で5日始まった新型コロナウイルス対策の「まん延防止等重点措置」について、「まん防」と省略することを控える向きが政府、報道に強まっている。語感がゆらゆら泳ぐ魚のマンボウのような緩いイメージを連想させ、「ふざけたような雰囲気がある」(西村康稔経済再生担当相)からだという。

 「まん防」は2月ごろから、首相官邸スタッフや新型コロナ担当の官僚、報道関係者、専門家らが非公式に使いだした。政府分科会の尾身茂会長は、政府が1都3県の緊急事態宣言解除を決めた3月18日、菅義偉首相と並んで臨んだ記者会見でこの略称を連呼。公の場において専門家の“お墨付き”を得て、人口に膾炙(かいしゃ)していくかに見えた。

 ところが、大阪などで新規感染者数の傾向が上昇カーブを描き出し、まん延防止等重点措置の初適用が現実味を帯びるにつれ、「緊張感に欠ける」などの指摘がネット上にあふれるようになった。

 魚のマンボウになじみの深い宮城県気仙沼市は4月3日までに、報道各社に向けて「まん防」と略すことに慎重になってほしいと要望する文書を出した。マンボウは、東日本大震災で被災し、再建された気仙沼市の道の駅「大谷海岸」のトレードマークになっており、文書は「人気のあるマンボウにとっても、再起を期す道の駅にとってもマイナスイメージとなりかねない」と訴えている。

 こうした世論の風向きに、尾身氏も2日の国会審議で答弁に立った際、「適切ではない。(略称は)『重点措置』を使った方が良い」と軌道修正。東京都の小池百合子知事は1日、「まん防」と発言して質問した記者に対し「あの、『まん防』っていう言葉、東京都では使ってないんです。『重点措置』です」とくぎを刺した。

 これまでに「マンボウ」「まん防」を何度か用いた本紙を含め、新聞やテレビなどの表現も「重点措置」「まん延防止措置」の略称に集約されてきているように見える。

首相周辺「期せずして広まり…」      

 「まん延防止等重点措置」と、正式名称は10文字ある。担当する内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室は「名称に必要な要素をすべて、案に盛り込んだだけ。特に別の選択肢はなかった」と長くなった理由を説明する。昨年末から検討に着手し、正式名称中の「等」は「医療提供体制の整備」の意味合いを含んでいるとのことだ。

 取材に応じてくれた職員は「同僚との会話では、必ず正式名称で話していますよ」と強調したが、「言いづらくないですか」と突っ込んでみると、とても答えづらそうになった。首相周辺は「(『まん防』の略称が)期せずして広まってしまった。省略せずとも、最初から短くて分かりやすい正式名称にしておけば良かったかも」と漏らす。

 さて、「まん防」。隠さなければならないほど不謹慎なのだろうか。

 落語家で「政治ウオッチャー」でもある立川談四楼さんは「柔らかい表現でようやく定着しつつあったのに、批判されたらすぐ撤回するなんて、政府も国民にきちんと説明する自信がないんだね」とチクリ。「アクセントを先頭の『ま』に持ってくると魚を連想してしまうけれども、後ろに持ってくれば響きはだいぶ変わる」とも話してくれた。確かに。

 呼び方はともかく、政府に問われているのは、いかに国民にウイルスの感染抑止対策を伝え、共感して行動してもらい、「第4波」を食い止められるかだ。素早く、集中的に対応しなければ、「まん延防止等重点措置」はすぐに3度目の緊急事態宣言に切り替わらざるを得なくなる。(前田倫之)

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