主力事業休止SSK、活路は 雇用、協力会社支援…不安渦巻く佐世保

 1950~70年代には大型タンカーを相次いで建造するなど、長崎県・佐世保地域の戦後経済の主役だった佐世保重工業(SSK、同県佐世保市)が、2022年1月に新造船事業を休止すると発表して1カ月半余り。地元では雇用確保や協力会社(下請け)の経営支援を模索する動きも始まった。ただ、今も売上高の7割超を占める主力事業からの事実上の撤退が、地域にどのように影響するのか見通せず、不安が渦巻く。 (宮崎省三)

 「会社ごとにさまざまな影響が考えられる。今は静かに願いたい」。46の協力会社でつくるSSK協力事業協同組合の幹部は、記者の電話取材に口が重かった。

 船体ブロック組み立て、溶接、艤装(ぎそう)、塗装、部品製作・加工…。多種多様な造船の工程に携わる協力会社は地場の中小企業が多く、それぞれの専門分野でSSKの事業を支える。「どう対応するのか、組合としてまとめるのは難しいだろう」。ある協力会社関係者は、組合幹部の立場をおもんぱかる。

 構内で働く従業員数(20年7月1日現在)はSSK(子会社を含む)936人に対し、協力会社は1075人。2次、3次を含めると下請けは100社を超えるとみられる。SSKは5月に250人の希望退職者を募り、再就職支援にも乗り出すが、協力会社にSSKからの支援はない。

 雇用などへの影響が懸念される中、長崎県や佐世保市の対応は素早かった。SSKの発表から5日後の2月17日、協力会社の雇用や経営支援を念頭に、長崎労働局、佐世保商工会議所など計6者で「連携会議」を発足させた。25日には佐世保市が「対策本部」を設置し、関係機関の総合窓口となる態勢を整えた。

 対策本部は離職者の再就職支援のほか、協力会社に向けて、(1)新たな販路開拓(2)業態転換(3)資金繰り-などの支援策を探る。ただ、関係者からは「長年、専門的な技術で勝負してきた地場の中小企業にとって、新たな販路探しや業態の転換は容易ではない」との声も漏れる。裾野の広い業界だけに、どんな影響が出るのか。対策本部の担当者も「現時点では予測困難」と頭を悩ます。

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 旧海軍佐世保工廠(こうしょう)の設備を生かし、終戦翌年の1946年に「佐世保船舶工業」として発足したSSK。佐世保には今も海上自衛隊や米海軍の基地があり、強みとしてきた艦艇の修繕を今後の経営の柱に置く。

 佐世保市の朝長則男市長は「自衛隊は各地方で事情を抱えるが、米軍なら受注増に向けて努力できるのでは」との見方を示す。

 これに対し、米海軍佐世保基地の監視を続けるなど米軍の動向に詳しい篠崎正人さん(74)は「米国にとって、本国で艦艇の修繕を行うことは雇用対策の一つ。米軍から受注を増やすには、よほどの政治力が必要だ」と懐疑的だ。米艦船の修繕受注には厳しい資格条件があり、対応できる協力会社は限られてもいる。

 自衛隊艦艇を中心とした修繕船事業にも課題がある。2019年度の事業別売上高は28億円で、名村造船所(大阪市)の子会社となった14年度以降で最低だった。最高は16年度の103億円で、4倍近い開きがある。5年に1度の艦艇の定期検査をどれだけ落札できるかが売上高に直結しており、経営の柱としては不安定な印象を拭えない。

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 一方で明るい兆しもある。3月、国内商社などが所有する液化天然ガス(LNG)運搬船が、SSK岸壁に着岸した。LNG船の修繕はSSKで初めて。

 造船業界に詳しい長崎県立大経営学部の宮地晃輔教授は「LNG船のような特殊船の修繕は収益性が高い。コスト競争で中韓企業に太刀打ちできない中、国内の特殊船受注は活路の一つ」とみる。

 その上で三菱重工業の子会社(長崎市)が今治造船(愛媛県)から船体ブロック建造を受注した例を挙げ「他社と協力して、新造船の一部工程を担うなどして技術を継承しておかないと、新造船事業の再開は難しくなるだろう」と指摘した。

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