父の事業が失敗、家計は火の車…18歳が憧れた「半端ないマザーと恩師」

復刻連載・18歳オトナですか?<1>

 会えない。寂しい。どうして君を好きになってしまったんだろう。

 福岡市・天神で声を掛けたミソノさんは、韓国の男性アイドル2人組「東方神起」の大ファンだ。1人は兵役、1人は兵役の一種の義務警察に入り、半年前の2015年7月から活動していない。

 「だから、日本の安保も気になる」。韓国では兵役中に亡くなる人もいると聞いた。もし戦争になれば、日本も徴兵になり、自分の彼も戦場へ-。一緒にいた親友が「嫌だ」と言った。

 推薦で大学に進む。この日は高校の授業が早く終わり、制服姿で、でもメークはばっちり決めて街に出てきた。オトナですか?と問うと「大人。選挙権もらったやん」と笑う。

 彼と大人の階段を上る。でも「将来は養護施設で子どもの心をケアしたい」と語る親友の隣で「私は夢が決まってなくて…」。

 大学では心理学を学ぶつもりだ。「接客でも日常生活でも、人の気持ちを考えることが重要だなって。円滑に過ごしたいから」。選挙権以外にも大人になるには必要なものがある。

 最近はパリ同時多発テロに関心を寄せる。日本も標的にされるかも。人が集まる場所が狙われそう。「ここ、天神だしね。怖い」。ニュースはテレビでしっかりチェックしている。世界が「円滑」になるのはいつだろうか。

   ×     ×

 「中途半端っす」。福岡タワー(福岡市)の近くで深夜、競技用自転車BMXの練習をしていたネロ君。オトナですか?と問うと、そう答えてくれた。だぼだぼのストリート系ファッションがよく似合う。

 「半端ない大人」が身近にいる。1人は母親。中学に入る前後、父の事業が失敗し、家庭は荒れ、家計は火の車となった。そんな生活に嫌気がさし、遊びほうけて昼夜逆転の生活。高校1年で中退した。それでも母は、仕事を掛け持ちして学費を工面してくれた。

 通信制高校に入り直し、今は大学を目指しつつ、仲間と趣味のBMXを楽しむ日々。「マザー(母)には感謝です。今の環境を整えてくれたから」

 もう1人いる。かつて担任だった男性講師。「28、29歳くらいっすけど結構すごい」とべた褒めだ。仕事の傍ら、東南アジアの貧困街で援助活動もしている。

 昨夏、自分も単身、フィリピンでの語学留学に挑戦した。ボランティアも体験し、子どもたちの勉強を手伝った。親に捨てられ、野ざらしで寝る子もいた。「向こうって本当に貧乏なんすよ。日本だと家はあるじゃないっすか」。1カ月間、世界の現実を見てきた。

 憧れの人は慈善団体に属して活動している。「自分も入るみたいな話になってて。めっちゃ楽しみ」。半端な分はこれから埋めていけばいい。

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 ◆連載「18歳 オトナですか?」は、選挙権年齢が18歳に引き下げられた2016年に掲載しました。2022年度には民法上の成人年齢も引き下げられます。彼らを大人として迎え入れる社会環境は整っているでしょうか。当時の連載を読み返し、考える材料にしてみませんか。文中の年齢、肩書、名称などの情報は全て掲載当時のものです。

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