コロナとWHO 「健康格差」解消が急務だ

 きょう7日は世界保健デーである。国連の世界保健機関(WHO)が1948年に設立された日にちなんで定められた。

 WHO憲章は前文で「最高水準の健康」を基本的人権と位置付け、人種や宗教、政治信条、経済的・社会的条件で差別されてはならないと説いている。

 昨年来、私たちは新型コロナウイルスパンデミック(世界的大流行)に直面し、現実はWHOの理念から程遠いと痛感した人も多いことだろう。今こそ原点に立ち返って考えたい。

 新型コロナ発生の起源を探るため、WHOが中国・武漢で実施した調査の報告書が先週、公表された。動物を介して感染が広がった可能性が高いと結論付けた。武漢の研究所からウイルスが流出したというトランプ前米政権の見方は可能性が極めて低いと否定する一方、冷凍食品に付着し持ち込まれたとする中国の主張は排除していない。

 実態解明には遠く及ばない内容だ。中国側との共同報告書となったため、日米など14カ国が透明性や独立性の観点から懸念を表明している。そもそも中国当局の初動が遅れ、情報が隠蔽(いんぺい)されていた問題だ。今回の調査自体も中国が拒み続け、実現したのは最初の症例確認から1年以上たった段階で、遅きに失したと言わざるを得ない。

 振り返れば、WHOのテドロス事務局長は中国の対応を「模範」と評するなど政治的配慮と取れる言動が目立ち、パンデミック宣言も遅れてしまった。

 ワクチン供給でも先進国が争奪戦を繰り広げ、資金力の乏しい途上国には滞ってしまう格差が生じている。本来、WHOの指導力で調整すべき課題だったはずだ。WHOが今年、世界保健デーのテーマに「健康格差」を掲げたのも、そうした反省や危機感の表明と受け止めたい。

 世界の健康格差の解消にはWHOの体制整備が急務だ。財政基盤や権限を強化し、政治的に中立な立場で活動できる組織へ変えなければならない。感染症対策では発生国で第三者による独立した調査ができる権限を与えることも検討に値する。

 新型コロナ対応では国際社会の協調が十分とは言い難い。その教訓から新たな感染症に備えようと、欧州連合(EU)や英国などが「パンデミック条約」を提唱している。情報共有やワクチン供給などで効果的な協力を促す仕組みを目指すという。WHOの体制整備の足掛かりにもなり得るのではないか。

 今のところ米国や中国、ロシアが参加しておらず、日本も様子見で態度を表明していない。国際協調を促進するこうした動きには日本も積極的に関わっていくべきだ。

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