【動画】次世代有機EL実用化へ着々 九大ベンチャーに世界から投資

 九州大発のスタートアップ企業「Kyulux(キューラックス)」(福岡市)が取り組む次世代有機EL材料開発が、実用化に向け歩みを進めている。2月には中国のベンチャーキャピタル(VC)などから過去最大となる36億円超を集め、累計の調達額は86億円を突破。発光効率と低コストを両立する技術への評価は高く、新規株式公開(IPO)にも期待が集まる。

 「発光の効率が高くてきれいな青色としては今、世界の有機EL技術で一番実用化に近いと言われている」。キューラックスの安達淳治取締役は説明する。

 有機ELは、有機化合物の薄い膜に電流を流して発光させる仕組み。スマートフォンやテレビなど、有機ELパネルを使った製品は、青、赤、緑の三原色を組み合わせ、さまざまな色を表現する。ただ、現行の技術は発光効率や製造コストの面で課題を抱える。

 有機ELの発光技術で第1世代と呼ばれる「蛍光」は発光効率が低く、余分に電力が必要となる。第2世代の「リン光」は発光効率が高いものの、レアメタル(希少金属)を使うため製造コストが高いのに加え、青色の発光性能が低い。現状は二つの技術を組み合わせた製品が主流だ。

 キューラックスは2015年、九大の安達千波矢教授らが発明した有機EL材料を実用化するため設立された。レアメタルを使わず、発光効率を高めた第3世代材料「熱活性化遅延蛍光(TADF)」だ。さらにTADFと蛍光を組み合わせ、三原色を高効率で発光できる第4世代材料「ハイパーフローレッセンス」(HF)を生み出した。

 世界のスマホやテレビメーカーは日々、製品の性能向上やコスト削減にしのぎを削る。HFは従来の材料と比べ、コストが10分の1程度に収まる一方、消費電力が3分の2となって発光効率も高まる。

 現在はHFの実用化に向けた詰めの段階にある。製品に載せるため耐久寿命を延ばし、スマホのバッテリーでも十分な性能が発揮できるよう開発を進める。安達取締役は「全ての有機EL製品をHFに置き換え、市場を独占的な立場で占有したい」と意気込む。

 事業化に向け、今年1月には外部からプロ経営者の中野伸之氏を社長に招いた。伊藤忠商事出身で、米国で日系半導体メーカーの経営再建や、産業革新機構で企業支援を手掛けた経歴を持つ。中野氏は「開発会社から事業会社に移行する部分を手伝いたい」と語る。

 国内外の大手メーカーは熱い視線を送る。韓国のサムスンディスプレーやLGディスプレーを皮切りに、国内勢ではジャパンディスプレイなども出資している。金融機関では、西日本シティ銀行設立のベンチャーファンドが第1号案件として投資。今回の中国からの出資は、みずほ銀行が海外拠点網を活用して一部協力した。資金は研究開発などに回す。

 22年にもHFの量産化に入り、23年のIPOを目指す。ベンチャー業界では、ITやサービスの分野で成功した企業が多い。「一挙に開花した大学発ベンチャーは少なく、ものづくりではあまりない。当社が一番成功に近く、実現したい」と中野氏。福岡から世界市場を開く。 (具志堅聡)

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