「緊急事態」1年 場当たり対策から脱却を

 闘いは長期化し、今なお終わりが見えない。政府は一連の対策を真摯(しんし)に検証し、自治体との連携や国民の協力の輪を広げる努力をさらに重ねるべきだ。

 新型コロナウイルスの感染拡大で政府が昨年4月7日に初めて緊急事態宣言を出して1年が過ぎた。初の宣言当時、国内の累計感染者は約4400人、死者は100人足らずだった。それが現在、感染者は50万人、死者は1万人に近づき、100倍ほどの規模に膨らんだ。

 昨年末からの「第3波」では重症者の急増で医療提供体制が逼迫(ひっぱく)し、政府は2度目の緊急事態宣言に追い込まれた。それでも感染は抑え切れず、今週から関西と宮城県で緊急事態に準じる「まん延防止等重点措置」を適用する事態に至った。

 手ごわいウイルスが相手とはいえ、政府の対応は後手後手に回り、迷走している印象も拭えない。そこで改めて指摘したいのは、感染症のパンデミック(世界的大流行)に対する政府の警戒感が元来乏しく、それがいまだに尾を引いている点だ。

 新型コロナ対策は昨年3月に新型インフルエンザに対応する特別措置法を急きょ改正し、コロナを適用対象に組み込む形で始まった。政府は当初、その期限を政令で今年1月末までと定め、1年以内での事態収束を見込んだ。その甘い認識が観光需要喚起策などの前倒し実施につながり、感染の抑止が進まない中、ワクチン接種体制の構築も立ち遅れる状況に陥った。

 全国知事会は今回の重点措置適用に際し、政府に対策の拡充を求める緊急提言を発表した。重点措置により、知事は特定地域で強制力を伴う幅広い対策を進めることができる。ただ、この措置の適用を決める権限は国に委ねられ、自治体にはない。

 緊急提言は、知事にも適用権限を与えることや大規模なPCR検査の実施、飲食店に限らない幅広い業種への支援、ワクチン供給の不安解消など広範に及ぶ。これらは現場の危機感にほかならず、国と自治体の連携不足もうかがわせる。菅義偉首相は重く受け止めるべきだ。

 重点措置自体も、今年2月にわずか4日間の国会審議で特措法を再改正して導入された急ごしらえの方策だ。国会ではその際、一連の対策の妥当性について第三者的立場から客観的、科学的に検証し、結果を公表するよう付帯決議が行われている。首相はこれを誠実に履行することも忘れてはなるまい。

 ウイルスの研究が進み、ワクチンも開発された新型コロナはもはや「未知の病原体」ではない。政府には早急に、場当たり的な対策から脱却していく取り組みが求められている。

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