変わりゆく街の変わらないもの 人気写真家2人が撮る福岡の「顔」

 福岡ビル、天神ビブレ、天神コア。福岡市の都心部ではここ1~2年、長年親しまれたビルが相次いで姿を消した。高さ制限が緩和された市による一連の再開発事業「天神ビッグバン」に伴う工事のつち音とともに変貌しつつある天神地区で、写真家の梅佳代さんと川島小鳥さんが新作を撮り下ろした。飾らない作風が人気の2人が切り取った人々の表情や街の光が「変わりゆく街で変わらないものは何か」を考えさせる。

 2人展は同市天神の商業施設「イムズ」内のギャラリー「三菱地所アルティアム」の企画。1989年開業のイムズも今夏に閉館する。最後の年を飾る展覧会として、2人の共演が実現した。1981年生まれの梅さんと、80年生まれの川島さんは、ともに木村伊兵衛写真賞の受賞経験があり、過去にアルティアムで行った展示も話題を呼んだ。

 2人は昨年秋に福岡市に滞在し、撮影。それぞれの持ち味が発揮されている。

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梅佳代(左) 川島小鳥(右) 福岡撮り下ろし作品 2020年秋(c)Kayo Ume (c)Kotori Kawashima

 「人間を撮ろう」。それだけ考えて福岡入りしたという梅さんは、天神中心部の警固公園や新天町商店街で、行き会った人に声を掛けて撮る得意の「ナンパ式撮影」(梅さん)を展開した。ベストセラーとなった写真集「うめめ」(2006年)をはじめ、ふざけて遊ぶ子どもなど自然体な人物の写真が評価を得ている梅さんは、市井の人々が浮かべる一瞬の顔色を逃さない。

 はにかんだ表情でたたずむ女の子の手を、少し警戒した顔で握りしめる妹らしき女の子。売り出し中の法被姿で満面の笑みを見せる商店関係者。ビルの警備員はカメラを向けられて戸惑っているようにも見える。

 街の姿がどれだけ変わろうとも、支え、盛り上げる主役が人であるのは変わらない。そんな人たちの作り込まないありのままを捉え、見る者に街への親近感と愛着を抱かせる。

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 川島さんは不動産業者に案内してもらったり、知人におすすめの場所を聞いたりしながら市内を巡り、偶然に任せつつ撮影に臨んだ。夕日が射す路地や昔ながらの団地、ネオンが反射する川辺の風景は、郷愁を誘う温かい光で彩られている。ぼんやりとしてセンチメンタルな作品が多い一方で、八百屋の前で少女が野菜を持つ1枚は少し重くシャープな感覚もある。オムライスの写真は鮮やかなケチャップの赤が目を引く。

 「全然違うものが、全体として一つになっている感覚」。川島さんは、滞在中に福岡都心にこんな印象を抱いたため、写真のトーンをばらつかせた。川島さんは言う。

 「街は古いものや新しいものが同時に存在している。ごちゃごちゃしているけど、調和している」

 急激に姿を変えていく福岡の都心部。一方で、現代的な高層ビル群に生まれ変わっても、変わらぬ都市の表情もまたあるだろう。そこに生息する雑多なものや人が入り交じり、息づくからこそ醸し出される街固有の装い=顔は、一朝一夕で変わるものでもない。

 街のこれまでとこれからに思いを向ける契機となるまたとない写真展である。

 (諏訪部真)

 ◇TENJIN MATSURI 梅佳代「天神さま」川島小鳥「ピンクの光線」は5月16日まで。

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