かんぽ営業再開 顧客本位を徹底できるか

 日本郵政グループかんぽ生命保険の個人向け保険商品の勧誘を1日に再開した。かんぽ生命と日本郵便による保険の不正販売問題を受け、営業活動を一昨年7月に自粛して以来だ。

 この問題では、郵便局に親しみを持つ顧客を裏切る不適切な営業が大掛かりに繰り返されていた。言語道断である。失った信頼を取り戻すには、顧客本位に徹する組織に生まれ変わることが欠かせない。

 ところが営業再開の直後、長崎市の元郵便局長が20年以上にわたり複数の知人らから億単位の大金をだまし取っていた疑いが発覚した。郵便局の看板を悪用した点はかんぽ不正と全く同じである。郵政グループの病巣は根深いと言わざるを得ず、信頼回復に近道はないことを肝に銘じてもらいたい。

 日本郵政は昨年10月に顧客訪問を解禁し「おわび活動」を重ねてきた。今回、内部調査や関係者の処分に一区切りがついたとして本格的な営業再開に踏み切った。

 個人向け保険の営業再開は1年9カ月ぶりである。金融庁と総務省から命じられた新規保険販売の停止は昨年1月からの3カ月間だったはずだ。これほど長くかかったのは、法令や社内ルールに反する営業が古くから広範に行われていたためだ。

 不正の全容解明のための調査と顧客の不利益解消、再発防止策の策定に追われた。厳しい批判を受け、ほとぼりが冷めるのを待った面も否定できまい。

 一連の問題で処分を受けたのは3300人を超える。日本郵政、かんぽ生命、日本郵便の旧経営トップ3人は引責辞任し、昨年1月に就任した増田寛也日本郵政社長の下で出直しを図ってきた。大規模に組織や人事、体制を刷新した。

 業務改善計画には数十項目もの対策が並ぶ。営業目標の達成や営業手当欲しさに経済合理性のない契約や解約が繰り返された反省から、営業目標や給与のあり方を改めた。

 契約や解約の際には重層的にチェックする。外部の弁護士でつくる特別調査委員会の提言を受け、募集状況を録音し、顧客の意向に沿った提案だったかを後で確認できるようにした。解約せずに保障を見直せる契約転換制度も取り入れた。

 一定の評価はできる。ただ、いくら立派な制度でも「仏作って魂入れず」では意味がない。

 保険の仕組みは複雑で、郵便局を信頼して勧められるままに契約したお年寄りも多数いたはずだ。家族などの苦情に的確に対応できなかったのは、組織のたがが緩んでいたためだ。再び規律が緩むことはないか、絶えることなき検証を求めたい。

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