菅氏、岸田氏、それぞれの「広島の陣」

 8日告示された参院長野選挙区補欠選挙と参院広島選挙区再選挙、13日告示の衆院北海道2区補選の「トリプル選」は、菅義偉首相の求心力や衆院解散・総選挙の戦略に直接影響する。地方選挙で苦戦が続く自民党は、特に「広島での確実な1勝」に重きを置く。「政治とカネ」の逆風が吹く中、衆院広島1区選出の岸田文雄前政調会長は「ポスト菅」としての生き残りも懸け、背水の戦いの陣頭に立つ。

 朝、広島市の平和記念公園にほど近い大通り沿い-。自民公認の新人候補の出陣式会場を取り囲むように「信頼回復と未来への改革」と大書されたのぼり旗がはためいた。対照的に、「自民」の文字はステージ背面の壁紙に小さく見える程度。選対関係者は「自民党ってだけで敬遠する人がいるからね」と声を潜めた。

 2019年参院選の買収事件で有罪が確定した、河井案里前参院議員の当選無効に伴う再選挙。公判中の夫・克行前衆院議員と二人三脚で、「自民公認」の旗の下に巻き起こした「政治とカネ」の不祥事の爪痕は深い。克行氏もこの3月に買収を認め、議員辞職したばかり。「最近の広島の地元ニュースは事件一色。タイミングが悪い」。陣営幹部のぼやきは止まらない。

 もともと広島は強固な自民、保守地盤のはずが、直近の選挙情勢調査の数字は野党候補と「僅差」の非常事態を告げていた。この日、出陣式で登壇した誰もが一様に「厳しい」「大逆風」と険しい表情を浮かべ、マイクを握りしめた山口泰明選対委員長も買収事件に触れつつ、「党本部を代表して深くおわびを申し上げたい」とこうべを垂れた。

 自民は、3月の千葉県知事選で推薦候補がトリプルスコア以上の大差で完敗を喫し、4月4日にも東京都小平市長選で公明党と一緒に推薦した候補が涙をのんだ。失速が地方選挙にとどまらず、「この国政3選挙で広島も崩されて全敗となれば、党内が一気に浮足立って政権が流動化する」と党三役経験者。詰まるところ、菅首相の解散権も封じられることになる。

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 その首相以上に「広島の陣」に今後の政治生命を左右されるのが岸田氏だ。

 直前の3月27日、「火中の栗」となるかもしれない3回目の県連会長職を引き受けると、「逃げるわけにはいかない」と珍しく感情を表に押し出した。領袖(りょうしゅう)を務める岸田派の議員や秘書を広島県内にくまなく張り付け、支援組織・団体をぎりぎりと引き締める。

 昨秋の党総裁選で首相に敗れて以降、無役に甘んじ、露出も減っている岸田氏の焦りの色は濃い。

 3月下旬-。支援を頼もうと、財務省大臣室で向き合った麻生太郎副総理からは「負けは許されねーぞ」とハッパを掛けられ、「よく、分かっています」と深く2回、うなずいてみせた。すなわち一敗地にまみれれば、「自分の選挙そっちのけで秘書を応援に出してきた派内の信を失い、党総裁どころか派閥のボスの座すら危うくなる」(党関係者)修羅場が待つ。

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 一方、共闘を成立させた野党側は自民の「政治とカネ」に照準を定め、クリーンさを前面に出す戦略で「3選挙全勝」をうかがう。

 女性の新人候補が挑む広島再選挙の出発式には、立憲民主党の蓮舫代表代行、国民民主党の舟山康江政調会長、社民党福島瑞穂党首がそろい踏み。口々に政府、与党を突き上げた。「金権政治にノーを突きつける大事な選挙だ」

(河合仁志)

 

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