愛がダダもれ「おにぎりパパ」 作り続けて気づいた妻の思い

シン・フクオカ人 #30

 〈何でも自分でやってみると、思わぬ側面が見えてくるものだ〉

 今日は「ツナマヨおにぎり」。ふんわり空気を含ませて小さく握った。煮卵、きんぴら、みそ汁と、旬のイチゴなども添えた。

 3児の父・吉田勇(41)=福岡市=が朝のおにぎり作りを始めたのは、料理上手なパパ友の影響だった。「自分も」と思ったけれど実は苦手。でもほとんどの母親は、家事や育児が苦手でも逃げたりしない。「おにぎりくらいなら作れるんじゃない? まず3カ月やってみたら」と背中を押され、3年前に始めた。

 作り始めた当初は、家族が起きてくる前に出勤していた。午前5時すぎ、1人静かに手を動かしながら子どものことを考える。「昨日はちょっと言い過ぎたかな」「今日も楽しい一日になるといいな」。自分が食卓にいなくても、おにぎりが「いつもみんなを思っているよ」というメッセージを届けてくれる気がした。

 「親が早起きして作ってくれていたという記憶は、いつか子どもたちを『自分は愛されていた』と、勇気づけると思うんです」

2018年に作り始めた頃のおにぎり(左)はシンプルだったが、3年間でめざましく進化した(右)

    ◆    ◆

 3カ月を達成すると、次は100日、さらに1年と目標が高くなっていった。記録用にSNSで公開したおにぎりは、今月12日で674号になった。

 続けるこつは「マスト(しなければならない)」にしないこと。義務感から頑張り過ぎると、「作ってあげている」と勘違いしてしまいそうな気がする。だから、おにぎりは毎日でなく週5、6日。仕事で疲れたときは「お休みするね」と伝えるし、子どもがパンを食べたがる日もある。

 おかずも、妻が作った常備菜を拝借したり、出来合いの物を使ったり。そもそも、一手間掛けることには重きを置いていない。でも「おいしい」と言われると、もっと喜ばせたくて土鍋でコメを炊くようになった。削り節でみそ汁を作るようにもなった。そうするうちに、ふに落ちたことがある。

 「一手間掛けるのは、愛なんだ」

 朝食は空腹を満たすことが目的なのだから、総菜や菓子パンを買ってきてもいいじゃないか、と以前は思っていた。忙しい朝なら、なおさら手作りにこだわる必要性はない。でも妻がそうしなかったのは、みんなの健康や家計など全部ひっくるめて考えていたから。愛のかたちは人それぞれだけど、妻の朝食には「愛がちりばめられていたんだ」と、やってみて気付いた。

長男が小学校の授業で書いた詩「パパのおにぎり」

    ◆    ◆

 子どもが大好きで、大学卒業後に幼稚園の体育の先生になった。腰を痛めて退職したが、今は発達障害の子どもを療育する事業所で働いている。

 幼児教育に携わって思うのは「適切な関わり方をすれば、子どもは自然に育っていく」ということだ。自分の気持ちを尊重し、他の子の気持ちも尊重できるようサポートする。そうして安心感や自己肯定感を育めば、子どもでも大人でも、自然と力を発揮できるようになる。

 人に優しく、自分にも優しく、ありがとうを伝え合う。そんな一日を過ごしてほしいから、愛を込めたおにぎりで送り出す。夜は「大好きだよ。おやすみ」とハグして眠りにつく。もちろん、ママにも。

 「恥ずかしがらずに、愛がダダ漏れの家庭にしたいんです」。それが、結婚前から思い描いていた「格好いい父ちゃん」の姿だ。

 =敬称略(山田育代)

長男の詩「パパのおにぎり」を見たクラスメートが、自宅でおにぎりを作り、写真を送ってくれた

 

関連記事

福岡県の天気予報

PR

福岡 アクセスランキング

PR