特別支援教育、私立進まず 研修少なく公立と差

 私立学校法により、建学の精神や独自の校風といった自主性が尊重される私立校。文部科学省は公立校と同様に特別支援教育の推進を求めているが、態勢づくりには学校間で温度差があるのが実情だ。問題行動を起こした児童を退学処分とする前に、どこまで対応すべきなのか。今回の訴訟は、私立校の特別支援教育に一石を投じそうだ。

 「発達障害児がいないので、発達障害に関する態勢整備や教員研修はしていない」。九州の私立小の管理職は打ち明けた。教員研修はしている九州の別の私立小関係者も「専門性のある教員はおらず、ごく一般的な対応しかできない」。公立校で特別支援教育を受けるため、自主的に転校する例はあるという。

 文科省は2007年の通知で、私立も含めた全ての学校に障害児の支援などを検討する校内委員会や、特別支援教育の中心となるコーディネーターの設置を求めたが、現在でも浸透しているとは言いがたい。

 文科省の17年度調査によると、私立小で委員会を設けていたのは51・1%、コーディネーターは46・2%だった。公立小はいずれも全校で設置済み。特別支援教育に関する研修でも、受講済みの教員は公立小89・3%に対し、私立小40・8%と大きな開きがあった。

 背景には、公立は教育委員会が所管するが、私立は管轄外という側面もある。福岡県内では、公立小中の管理職や特別支援に携わる教員らに、県教委が毎年研修を行っているが、私立は県主催の研修がない。希望に応じて講師を派遣する事業はあるが、県内の私立小9校に対し過去3年の利用は年0~2校にとどまる。

 今回の私立小の場合、教員研修は実施しているが委員会やコーディネーターは未設置という。男児の保護者には「対応できる態勢が整えられない。公立なら態勢があり、転校が男児のためになる」と説明していた。

 日本大文理学部の高橋智教授(特別支援教育)は「私立は特別支援教育の実施に関する学校間の差が大きく、『うちでは対応できない』と暗に転校を求めるケースは度々ある」とする。

 その上で「私立とはいえ義務教育段階の小学校なのだから、最大限のきめ細かな対応があるべきだ。学校単独で難しければ、特別支援学校や発達障害者支援センターなど関係機関に協力を求め、子どもたちの居心地が良い学校づくりを進める必要がある」と話している。

 (森亮輔、編集委員・四宮淳平)

関連記事

福岡県の天気予報

PR

福岡 アクセスランキング

PR