福岡最古の喫茶店で本格洋食 なぜ?大人気なのに「限定15食」

【福岡を食べる】

 午前11時のランチタイム開始に注文したのに「売り切れです」と言われれば、客は「えっ」となるだろう。福岡市で最古という喫茶店「カフェ・ブラジレイロ」(博多区店屋町)。ランチメニューは、オムライスやハンバーグなど洋食5種類。中でも、1日限定15食の「ミンチカツレツ」は予約なしではほとんどお目にかかれないのだという。

 博多駅から北西に延び、オフィスビルが立ち並ぶ大博通りから一筋裏に入ると、白い洋風の館がたたずむ。早春の水曜日に訪ねると、「今週はもう予約で一杯になりました」と、店を切り盛りする中村久美子さん(73)。6日前に予約していた甲斐あって、テーブルに届いたミンチカツレツ。ラグビーボールのような独特の形が目を引く。

 ランチメニューは限定提供で、どれもこれも人気だが、ここは、創業80年を超す本格コーヒーの店だ。

 1934年、ブラジル・サンパウロ州のコーヒー局がブラジルコーヒーの宣伝で開業。当時は東中洲の河畔にあった。作家の火野葦平や原田種夫らが集い、1杯15銭のコーヒーを手に論を交わした。

 文化的サロンであり、福岡の洋食の草分けでもあった。クリスマスには仮装でもてなし、フルコースの料理を提供。戦争でいったん店を閉めたものの、戦後の46年に再開し、51年に今の地に移転した。

戦前のクリスマスイベントで仮装した従業員たち

 ミンチカツレツが登場したのは、戦前にコックを務めていた納屋武太郎さん(故人)が復帰した55年ごろ。初めはビーフとポークの合いびきで、丸いコロッケ状。ヘルシー志向が高まり、チキンとポークの俵形に。そこには、77歳まで勤め上げた納屋さんの「食材にこだわり、時代や流行に合わせる」精神が宿る。

 現在、その調理場を任されているのは富永典子さん(40)と阪田典子さん(50)。20年ほど前、入店2年目の富永さんが俵形からラグビーボール形に変えたのだという。「俵状に丸めているうちに偶然に出来て、作りやすかったから」

 柔軟な発想で今の形となったミンチカツレツ。肉とタマネギが詰まった丸みのある中央部分はふっくらと、先のとがった部分はカリカリした食感。デミグラスソースは鶏がらスープがアクセントとなってコクがある。からしをつければ味に変化も生まれる。マッシュポテトやニンジンのソテー、揚げたナスが添えられ、サラダ、ライスが付いて1200円(税込み)。

 老舗の本格洋食を一度は食べてみたいと、県外だけでなく、海外からも客が引きも切らずに詰めかける。でも限定提供を変えるつもりはない。中村さんは「食事が中心の店にはなりたくない。自家ばいせんのコーヒーを楽しんでほしいから」。中村さんの夫で、オーナーの好忠さん(83)は傘寿を過ぎてなお、コーヒー豆を焙煎する。(上野和重)

福岡県の天気予報

PR

福岡 アクセスランキング

PR