熊本再生と共に育った5歳 両親から伝えたい「誰かを支える人に」

 熊本地震が起きた2016年4月、熊本市で生まれた赤ちゃんは約600人。その赤ちゃんそれぞれに物語がある。この15日、5歳の誕生日を迎えた長迫沙和ちゃん=同市西区=もその一人だ。前震直後に生まれ、本震では母梨沙さん(39)に抱かれて、入院していた病院の外に避難した。今では公園を元気に駆け回り、妹をかわいがる。両親は「とてつもなく大変な中で生まれてきてくれた命。強くそして優しく育ってほしい」と願っている。

 前震の時、梨沙さんは車椅子に乗り、産婦人科の廊下を分娩(ぶんべん)室に向かっていた。やまない余震。夫の康利さん(39)が何度も“2人”を守ろうと覆いかぶさった。担当医が一時エレベーターに閉じ込められるアクシデントもあった。16年4月15日午前1時半、困苦の中で女の子が誕生した。

 「かわいい」

 初めて見るわが子が、それまでの張り詰めた気持ちを解きほぐしてくれた。

 だが24時間後、さらに大きな本震が親子を襲う。院内は停電し、梨沙さんは新生児室にいた沙和ちゃんを抱きかかえ、スマートフォンの光を頼りに駐車場へ逃れた。必死に階段を駆け降りたことだけを覚えている。「外は寒くて真っ暗。沙和を守ることに必死だった」

 その後6日間入院。授乳室にマットを敷いて過ごした。1人のスペースは1畳ほど。毎回の食事は少しの水とおにぎり1個。他の母親たちと励まし合った。

 退院して驚いた。道路や地面が波打っている。自宅の中も家具が倒れ、めちゃくちゃだ。「大変なことになった」。夫婦の心を支えたのは新しい家族の存在だった。

 あれから5年。熊本の街は着実に復興を遂げている。熊本城の天守閣は美しい姿を取り戻した。住む街を見渡せば寸断された道路は復旧し、家々の再建が進んでいる。

 その中で、沙和ちゃんもすくすくと育った。家では大きな声で歌やダンスを披露する。将来の夢は「お花屋さん」。家族の元気の源だ。妹佳和(かな)ちゃん(1)も生まれ、一緒に遊んであげるなど、お姉ちゃんの自覚も芽生えてきた。

 「沙和ちゃんはね、地震の時に生まれたんだよ」と話す娘は、最近、熊本地震のことを少しずつ理解できるようになってきた。康利さんと梨沙さんは誕生日のケーキを前にはしゃぐ姿を見て、5年前を思い出す。

 2人は、もう少し大きくなったら娘に伝えたいと考えている。地震で大変だったこと。たくさんの人に支えられて生まれ、たくさんの人に愛されて育ってきたこと。そして「誰かを支えられる大人になってほしい」という両親の思いを。 (長田健吾)

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