対中国「傍観せず積極姿勢を」 台湾が期待する日本の役割

 16日に米ワシントンで開かれる日米首脳会談は、台湾海峡情勢にどれだけ踏み込んで言及するかが焦点となる。「一つの中国」原則を掲げ、武力統一も辞さない姿勢で台湾への圧力を強める中国に対し、米国は近海に空母を派遣して対抗。緊張が高まる中、日本が果たすべき役割は何か。期待と注文を台湾政府のシンクタンク、中央研究院の呉叡人副研究員(58)に聞いた。 (聞き手は田中伸幸)

 -香港の自治を事実上奪った中国が次に標的にするのは台湾だとの危機感が、米国の政治家や外交専門家の間で広がっている。

 「香港の混乱は台湾に『人ごとではない』との危機感をもたらした。米中両軍が近海でにらみ合う現状に連日ハラハラさせられる。意図的でなくても軍事衝突の危機が迫っていることは否定できない。台湾が戦場になるような事態は絶対に防がなくてはいけない」

 「米中対立によって台湾の地政学的な重要性が増し、関心が高まること自体は歓迎する。中国の攻撃的な態度が強ければ強いほど、実は台湾住民には安心感が出てくる。何か起きたときに米国が必ず守ってくれると信じる人が多いからだ。米軍の行動は米国の明らかな意志表明だと感じる」

 -米国内にはこれ以上の海外派兵を嫌う世論が根強い。同盟国には有事に米軍が本当に来てくれるのかとの懸念が少なくない。

 「バイデン大統領は、トランプ前大統領と違って欧州の同盟国などと共に対中抑止力を強めようとしている。米国だけなら本当に派兵するのか心配だが、多国間の対応なら安心だ。実際に中国を追い詰めていけるのではないか」

 -中台の話し合いはどう進めるべきか。

 「台湾の防空識別圏に中国軍機を繰り返し進入させるなど、習近平(国家主席)の鉄腕的なやり方に多くの台湾の人々が反発している。非常に強硬に国内の反対勢力を制圧する中国と、話し合って協調するのは至難の業だ。今は多国間の包囲網で中国を抑え、戦争を防ぐことが一番の戦略だ」

 「同時に(ウイグル族の強制労働を懸念した)外国企業が新疆綿の不使用を表明したり、北京での冬季五輪ボイコット論を浮上させたり、あらゆる圧力をかけながら中国の膨張を阻止し、孤立無援の状況にしていく必要がある」

 -日米首脳会談の共同文書では日中国交正常化以降、日本側の遠慮もあり台湾への言及を避けてきた。今回、日本に何を望むか。

 「バイデン氏は(中国と対抗すると)腹をくくっていると思う。首脳会談では菅義偉首相に明確な行動を求めるのではないか。日本としては難しい判断だろうが、少し積極的に前に出てほしい。最低限、3月の日米2プラス2(外務・防衛担当閣僚会合)で『台湾海峡の平和と安定の重要性』を強調したのと同程度の表明を期待している」

 「台湾だけでなく(沖縄県・尖閣諸島や台湾、フィリピンを結ぶ軍事戦略上の)第1列島線を越えて太平洋にも進出しようとする中国への対応は世界的な問題だ。日本のリーダーたちには傍観者ではいられないと認識してほしい。日本が対中封じ込めの枠組みに加われば、中国への抑止力はさらに強くなるはずだ」

 ご・えいじん 台湾の中央研究院・台湾史研究所の政治学者。専門は比較政治、政治思想。香港政府への抗議デモを行う学生や市民と、台湾の若者らをつなぎ、台湾住民の主体性や民主主義の重要性を訴える活動に取り組む。

関連記事

PR

国際 アクセスランキング

PR