傷つけない、孤立させないために 子どもと里親を一緒に支える 

 平日午後3時すぎ。大分県別府市にある児童養護施設「光の園」の子どもたちは学校から帰ると真っ先に事務室へ向かう。「雨で靴下がぬれちゃった」「おやつ食べたーい」。「ただいま」を告げ、職員と少しおしゃべりしてから、敷地内の自分の家へ戻っていく。

 「ピアノに行ってきます」。同じころ、中学生のミキさんと小学生のユウちゃん=いずれも仮名=の姉妹は習い事に行く前に事務室へ立ち寄った。「いってらっしゃい」。職員たちはほかの子と同じように笑顔で見送る。でも2人は普段は、施設にいない。病気で育児ができない実の親と離れ、ひとり親の里親と一緒に暮らしている。

 姉妹が初めて光の園に来たのはミキさんが幼稚園のころ。施設で数日間子どもを預かり、里親の負担を減らす。「レスパイト(休息)・ケア」の制度だ。

 姉妹の里親はレスパイトを依頼する際、いつも園を訪れ、顔なじみの里親支援専門相談員にそのときどきの悩みを打ち明ける。

 「最近、学校に行きたくないと言うんですよね」「実の親のこと、話した方がいいのかなあ」-。どこの親も抱える子育ての困り事、里親特有の迷い。気軽に、ときにじっくり話し込む。「焦らずゆっくり子どもの話を聞いて」「実親の話は本人が尋ねてきた時に話せばいいと思いますよ」

 以前は毎月1回だったレスパイト。最近は里親の出張仕事など姉妹が納得するときだけにした。2人とも思春期に入る。施設に泊まることに抵抗を感じるかもしれない。そう考えて職員と相談した結果だ。職員たちは「親戚のような気持ち」で2人を迎える。

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 姉妹が滞在する部屋は事務室棟の向かいに立つ「児童家庭支援センター」にある。1階に約8畳が4室。うち3室が里親レスパイトのほか、育児疲れの実親から子どもを預かる「ショートステイ」や、児童相談所の一時保護措置などで一定期間預けられる子どもが過ごす。滞在は1日から長い子で半年。最近は常に満室で、面会交流用に空けているもう1室も使って受け入れる。

 小学生のマイちゃん=同=はこの冬、一時保護措置でここに来た。その後、里親への委託が決まり、今は準備期間の真っ最中だ。

 まず施設内で里親と対面し、面会を重ねる。次は一緒に外出。次は里親の家で1日過ごす。次は1泊してみる-。3カ月掛けて少しずつ関係を築きながら、マイちゃんとどう関わるのがいいか、里親と相談員たちは一緒に考えてきた。

 こだわりが強かったり多動があったり。発達に特性のある子、一定の年齢を超えた子。里親とうまく信頼関係が築けず、施設に戻ってくる子も少なくない。

 国が里親委託を優先する中、親と離れ傷ついた子が再び傷つかないため、そして奮闘する里親を孤立させないため、施設が支える。

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 敷地内には児童養護施設のほか、保育所や児童館、学童保育所など広く地域の子どもたちが利用する施設が五つある。みんな「光の園の子」だ。園にはその保護者たちも集まってくる。

 園長の松永忠さん(59)は地域の大人たちにいつも、施設で暮らす子どもの話をする。2歳を過ぎても歩けなかった女の子が運動会の徒競走で一番になったこと。発達障害で悩んだ男の子が大型貨物船の操縦士として活躍していること。

 そこには二つの願いがある。施設で育つ子どもを特別な「施設の子」にはしない。そして子どもたちとの関わりの中で職員が学ぶ一つ一つを、地域にもプレゼントしたい。伝わると信じている。 (本田彩子)

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