日米首脳会談 対中強硬と共存どう描く

 菅義偉首相とバイデン米大統領による初の対面での会談は、台頭する中国への対処を軸にかつてないほど日米両国の結束を打ち出した。

 バイデン氏が就任後、最初に会う外国首脳に菅氏を選んだのは、米国が「唯一の競争相手」とみなす中国と対峙(たいじ)する最前線に日本を位置付けるからだ。

 両首脳の共同声明は同盟関係の強化をうたい、中国が「核心的利益」と神経をとがらせる台湾問題や、ウイグル族などの少数民族、香港の民主派に対する人権抑圧に言及した。

 中国が国内の弾圧とともに、対外的にも覇権主義的な膨張を続ける以上、避けられない内容である。民主主義や法の支配など普遍的価値を損なう問題では妥協できないとの姿勢を示す意味も小さくないだろう。

 日本は尖閣諸島問題を巡り、中国による現状変更に直面している。今後の安全保障を考える上でも、米国の積極的な関与は歓迎したい。

 今回の会談は大筋では評価できるが、懸念も拭えない。

 日本にとって中国は最大の貿易相手国であり、経済面では互いに切り離せない関係だ。中国の人権問題に関して日本が先進7カ国(G7)で唯一、制裁を科していないのも関係悪化を望まないためだ。米国の対中戦略に追随するだけでは守れない日本の国益もある。

 特筆すべきは共同文書で52年ぶりに台湾問題へ踏み込んだ点だ。中国は台湾へ軍事的圧力を強めており、暴走をけん制するのはやむを得ない。

 菅氏はバイデン氏に「防衛力強化の決意」も示したという。ただ台湾周辺で米中の紛争が起これば、日本への影響は避けられない。台湾は専守防衛を原則とする日本の防衛の対象外であるものの、安全保障関連法に基づき米軍の支援を求められる事態も想定される。

 台湾有事を見越した政権内の議論が十分に積み重ねられてきたとはとても思えない。共同文書には「両岸問題の平和的解決を促す」と記した。緊張が高まるのは国民も望まない。日本は武力に頼らず、冷静な外交努力による解決を先導したい。

 首脳会談では、北朝鮮問題についてバイデン氏が日本人拉致問題への関与に言及した。核とミサイル開発という難問も抱えるだけに、中国の関与がなければ進展は難しいだろう。

 中国の協力なしに解決できない問題は気候変動から感染症対策まで多岐にわたり、両首脳は認識を共有した。日本は中国に対し、隣国として共存を図る意思に変わりはないことを伝え、個別のテーマで協力の実績を重ねる戦略を探るべきだ。

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