いつもの朝のはずが心が死んだ 悲惨な事故防ぐ…「母」は動く

 京都府亀岡市で2012年に起きた集団登校事故でいとこを亡くした福岡県大野城市の村岡麗菜さん(27)が、事故なき社会を目指して講演活動を始めた。姉のように慕っていた松村幸姫(ゆきひ)さん=当時(26)=はおなかに新しい命を宿したまま、突然帰らぬ人となった。間もなく事故から9年。幸姫さんの年齢を超え、同じ2児の母になった。「誰かの家族が目の前を歩いているという意識でハンドルを握って」。遺族、そして母親として、事故の悲惨さと遺族の苦悩を伝える。

 普段と変わらない朝、のはずだった。12年4月23日朝、集団登校中の児童らの列に無免許の少年が居眠り運転した車が突っ込んだ。長女に付き添っていた妊娠7カ月の幸姫さんと女児2人が犠牲となり、児童7人が重軽傷を負った。

 村岡さんは10歳まで亀岡市の隣町で育った。近くに住んでいた「フキちゃん」(幸姫さんの愛称)は物心つく前からかわいがってくれた「本当のお姉ちゃんのような存在」。お互いの家に泊まっては化粧を教えてもらい、結婚式でのウエディングドレス姿に憧れた。

 事故の一報を受け、家族と新幹線で京都へ向かう途中も理解が追いつかなかった。予想もしない現実に「自分の心が死んでいくのが分かった」。

 少年は無免許で連日夜遊びした末の居眠り運転だったが、罰則の重い「危険運転罪」(当時)は適用されなかった。理不尽さに憤り、厳罰化を求めた遺族は、逆にインターネット上の誹謗(ひぼう)中傷に苦しめられた。「必ずしも加害者だけが十字架を背負うわけじゃないんだ」。事故に関わった少年の中には、村岡さんの小学校時代の同級生もいたが「少年法で守られている」と感じた。

 遺族の訴えは13年の自動車運転処罰法の成立につながったものの、社会の記憶は薄れつつある。毎年事故現場で花を手向けてきた命日も、新型コロナウイルスの影響で昨年はかなわなかった。「このままでいいのかな」。今も年間約3千人が交通事故の犠牲になる現状にも疑問が募った。

 葛藤の中で迎えた昨年12月の幸姫さんの誕生日、動画投稿アプリに事故の記事をまとめた動画を投稿した。再生回数は240万回以上。「今でも衝撃がよみがえってくる」「当時妊娠中で、テレビ越しに手を合わせたのを覚えています」…。大きな反響に背中を押された。

 3月に交通事故撲滅を目指す団体「route(ルート)」を家族と立ち上げ、今月14日には一般社団法人「安全運転推進協会」(福岡県大野城市)のウェブセミナーで講演した。「ほほ笑ましい通学風景を大人が守らないといけない」と訴えた。今後も講演や少年の更生支援に取り組むつもりだ。「もう被害者も加害者もつくりたくない」

 村岡さんは22、28日にも同協会のウェブセミナーで講演する。参加無料で定員100人。申し込みは同協会=http://safe-driving.or.jp/

(梅沢平)

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