コロナで凍る需要、強気と弱気が交錯 ホテル、異例の「等価交換」も

コロナ下の胎動㊥

 関係者でさえ、「当初は信じられなかった」と語る異例の取引だった。

 福岡地所グループが所有する福岡市の大型複合商業施設「キャナルシティ博多」内にあるホテル「グランドハイアット福岡」と、星野リゾート系の投資法人が持つ博多駅近くの「ANAクラウンプラザホテル福岡」の等価交換だ。3月中旬に両社が発表した。

 不動産の鑑定評価額はグランドハイアットの方が約5億円高く、収益力を示す利回りも、ホテルの格式も上回る。築年数も約20年新しい。星野リゾートは取引と同時に福岡地所と協業に関する基本協定を結んだ。代表の星野佳路は「キャナルの運営参画についても、どのように貢献できるかを含め積極的に考えたい」と意欲をみせる。

 一見すると星野リゾート側に優位に見えるこの取引だが、地場不動産開発会社の経営者は「勝者は福岡地所だ」と解説する。注目するのは福岡地所が取得したクラウンプラザの立地だ。市が博多駅周辺で進める再開発促進事業「博多コネクティッド」のエリア内にある。福岡地所は近隣の西日本シティ銀行本店の再開発にも参画。築44年のクラウンプラザも建て替えを視野に入れているとみる。

 オフィスなどとの複合型や、上位ブランドのホテル「インターコンチネンタル」への転換も構想の一つ。福岡地所関係者は「コロナ禍の収束状況をにらみながら、あらゆる選択肢が考えられる」と含みを持たせる。

状況一変「赤字続きで体力勝負」

 コロナ禍前、訪日客が増加していた福岡市のホテルは客室不足が指摘され、投資が相次いでいた。2019年度のホテル・館客室数は約3万5600室と、15年度から30%増えた。

 だが、状況は一変する。「赤字続きで、体力勝負だ」。市内のビジネスホテル支配人はため息をつく。同市・天神に近い創業53年の老舗「タカクラホテル福岡」は自主廃業を決断。「ホテルアセント福岡」も3月末で22年の歴史に幕を引いた。

 開発にもブレーキがかかる。信用調査会社の東京経済福岡支社によると、市内では昨年2月以降、着工予定のホテル19棟のうち8棟が未着工か、駐車場やオフィスビル向けになっていた。ホテルの採算ラインは稼働率6割とされるが、5割に満たないホテルが大半。投資が急速に冷え込んでいる。

 昨夏には、天神の再開発促進事業「天神ビッグバン」で、大名小跡にできる高層ビルに進出が予定される米系高級ホテル「ザ・リッツ・カールトン」の計画頓挫のうわさが地元政財界で広がり、関係者が火消しに追われる一幕もあった。

ホテルの建設計画が進まず、駐車場として活用されている用地=福岡市博多区

突き付けられた運営刷新

 コロナ禍の先行きは見通しづらく、業界には強気と弱気が交錯する。

 21年3月期に過去最大の780億円の最終赤字を見込む近鉄グループホールディングス(大阪市)は、博多駅前の都ホテル博多など8ホテルを米投資ファンドに売却する。都ホテル博多は市が創設した「高級ホテル建設促進制度」の認定1号案件。約130億円をかけ、博多駅筑紫口前に19年9月に開業したばかりだ。

 一方、コロナ下でも独自の会員制度などで高い稼働率を維持する大手チェーン「アパホテル」(東京)は、今年中に博多駅周辺に6棟1631室を集中出店。福岡市を重点エリアと位置付け、新規の用地取得へ意欲もみせる。

 グループを率いる元谷外志雄は「どんな業界でも一番のところに人、モノ、金、情報が集まる」と、25年3月末までに全国の客室数を15万室に伸ばす「頂上戦略」の達成へ意気盛んだ。

 ホテルオークラ福岡社長の高柳健二は、ホテルの急増について「前例踏襲でやっていても売り上げは維持されるという考えに陥っていた。訪日客の増加はそうした考えを助長し、客室を作ればもうかる風潮になっていた」と指摘する。

 価格競争激化や客室数の増加で、業界はコロナ前から深刻な人手不足に直面していたという。高柳は「コロナで突き付けられたのは施設だけでなく、運営そのものを刷新することだ」。付加価値が高い食材や、丁寧な接客サービスの提供といった質への転換に生き残りをかける。(敬称略)

関連記事

福岡県の天気予報

PR

福岡 アクセスランキング

PR