大崎事件、隣人供述の矛盾を動画に 弁護団「事故死」立証に挑む

 鹿児島県大崎町で1979年に男性の遺体が自宅の牛小屋で見つかった大崎事件で、殺人と死体遺棄罪で服役した原口アヤ子さん(93)が裁判のやり直しを求める第4次再審請求の進行協議が23日、鹿児島地裁である。担当裁判官が4月に代わったことを受け、検察、弁護側の双方がこれまでの主張の要点を説明する。弁護側は自作の再現動画を使い、大崎事件の真相が「殺人なき死体遺棄事件」だったとするアナザーストーリーの立証を試みる。 (編集委員・中島邦之)

 確定判決の認定はこうだ。(1)79年10月12日、酒に酔ったアヤ子さんの義弟(被害者)が自宅から約1・5キロの側溝に転落(2)路上に横たわる被害者を隣人2人が軽トラックで連れ帰り、自宅土間に放置(3)その後、土間で被害者を見たアヤ子さんが日頃の恨みから殺意を抱き、夫らと殺害、遺体を牛小屋に埋めた-。土間で被害者を見たことを「犯行の起点」とした。

 一方、再審開始を認めた第3次請求の福岡高裁宮崎支部決定(2018年)は、弁護側の法医学鑑定を基に「被害者は側溝転落による出血性ショックで、自宅搬送時に死んでいた可能性がある」と指摘。確定判決では争いがなかった隣人供述について「生きている被害者を土間に置いたという核心部分は(法医学鑑定と矛盾し)認められない」とした上で、死体遺棄の犯人像に触れ「自宅到着後、何者かが被害者を牛小屋に埋めた」と確定判決とは異なる判断をした。最高裁が19年にこれを取り消した。

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 弁護側は第4次請求で、前回の鑑定を補強する医学鑑定を提出。「転落事故の影響で被害者が自宅到着時に死んでいたため、(隣人の)2人が自分たちのせいだと勘違いしたのではないか。親切で運んだ彼らにも不運な事故だった」と主張する。

 2人の供述には大きな食い違いがある。弁護側は供述調書を基に、事件当夜の2人の行動を3DCG(3次元コンピューターグラフィックス)で再現。23日の協議で「供述の矛盾」を視覚的に伝える計画だ。

 最大の矛盾は、被害者が自宅到着後に自分で歩けたかどうか。1人は当時「2人で抱えて車から降ろし土間に運んだ」と供述。別の1人は「被害者は自分で車から降り、千鳥足で家に入った」と全く異なる。

 矛盾はまだある。軽トラの駐車方向、牛に餌をやる順番の違いだ=表参照。なぜ同じ体験をした2人の供述がこれほど異なるのか。隣人の1人が当初、自分も牛小屋に行ったと説明しなかった理由は何か。そして「夜の牛小屋」に立ち入ったのは、本当に餌をやる目的だったのか-。

 弁護団は2種類の供述鑑定書も地裁に提出。隣人供述の食い違いについて、心理学鑑定をした淑徳大の大橋靖史教授は「2人の供述内容が、実際には体験してない出来事である兆候を示している」と分析。供述をコンピューター解析した立命館大の稲葉光行教授は「事実と異なる説明をどちらか一方か、あるいは両方がしていることを意味している。裁判所には、その理由を見極めて真実を明らかにしてほしい」と語る。

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