「心からの謝罪、矯正教育こそ」 18、19歳厳罰化に疑問抱く遺族

 衆院を通過した少年法改正案について、交通事故遺族として約20年にわたって少年院や刑務所で講話を続ける片山徒有(ただあり)さん(64)=東京都=が20日、西日本新聞の取材に応じた。18、19歳への厳罰化は、少年院などで矯正教育を受ける機会を減らし「再犯が増える」と指摘。立ち直りの過程で初めて「心からの謝罪が生まれる」として、教育によって更生させる保護主義の重要性を訴える。

 午後1時からの本会議はわずか5分で改正案を可決した。職場のパソコンでネット視聴していた片山さんはメモを片手に言葉を失った。「与野党の討論もなく、こんなにすんなり通ってしまうなんて。問題点が多いだけに非常に残念だ」

 6日の衆院法務委員会では参考人として意見陳述し、起訴後の実名報道の解禁反対などを主張した。刑事裁判の判断によっては、再び家庭裁判所に戻されて保護処分になることがあると訴えた。名前が公表されてしまえば、取り返しがつかない。「国はまれなケースだとごまかしてはいけない。これは法の欠陥だ」

 一方で社会には「少年法は甘い」との見方がある。片山さんも「初めはそう思っていた」。講話のための少年院通いを20年続けるうち、その考えは変わった。

 入所すれば1年間かけて、生い立ちなど人に明かしたくない過去から非行に至った経緯までを見つめ直す。「教育によって心の内面にまで入ってくるのが少年法の保護主義。表面上の謝罪や言い逃れをしていては出院できない」

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 1997年11月の朝、小学2年生だった次男の隼(しゅん)さんは、自宅近くの交差点でダンプカーにひかれた。ランドセルを背に横断歩道を青信号で渡っていた。そんな遺族でありながら、加害者の更生に協力するのには訳がある。「社会で生活しながら自分の責任を自覚するのは困難だと思うから」

 当時30代だった運転手は執行猶予判決が出て以来、一度も訪ねてきたことはない。「被害者は、自分が加害者側だったら誠意を持ってこう対応するのに、などと常に被害のことを考える。そうした考えと実際に加害者が取る行動とのギャップに苦しむ」

 2000年に市民団体「あひる一会(のいちえ)」を設立。被害者支援に当たりながら、刑務所での講話も始めた。刑務作業が中心の刑務所と、全てを教育に使える少年院とでは「心からの謝罪に近づきやすいのは少年院だと思う。その道を狭める改正案には賛同できない」

 少年による刑法犯などの摘発は近年、戦後最少を更新している。法務省の法制審議会でも矯正教育を一定評価する意見が相次ぐ中で、なぜ法改正が必要なのかと疑問が湧く。「適用年齢はむしろ大学を卒業した23歳や、少年院に収容できる上限の26歳にまで引き上げた方がいい」。教育によって再犯を防ぎ、自分たちと同じような被害者を一人でも減らしたいと願う。 (一瀬圭司)

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