基地、次は拒めるか 沖縄・伊江島、手厚い軍用地料「踏み絵」

 沖縄県の伊江島(伊江村)は、米軍伊江島補助飛行場を受け入れ、国から交付金や補助金を引き出してきた。76年前の激戦で村民の3割が犠牲になり、戦後は土地を奪う米軍に対し島ぐるみで闘った。海兵隊の訓練が激化する今、基地反対運動は影を潜める。「アメとムチが声を奪った」。反対派は憤る。

 「勝手に占拠しているのに、何が『無断で立ち入ることはできません』だ」。3月下旬、畜産農家の平安山良尚(へんざんよしひさ)さん(59)は補助飛行場のフェンスにある看板をにらみ付けた。フェンス内に所有する土地は約2ヘクタール。駐留軍用地特措法を盾に、国は賃貸契約を結ぶことなく米軍に提供している。

 両親は伊江島の地上戦で親ときょうだいを亡くした。強制接収された家や畑を取り戻すため、家族総出で闘争に加わった。「軍は人を殺し、文化を壊す」。武力による平和はあり得ない、との信念は揺るがない。

 平安山さんのように賃貸借契約を拒む「反戦地主」は数えるほどになった。理由は「補助金と軍用地料をもらっているからだよ」。

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 日米は1976年、移設条件付きで補助飛行場の全面返還に合意。しかし、89、99年に島袋清徳(せいとく)村長(83)=当時=は国の財政支援を条件に新たな訓練を受け入れる。89年以降、防衛省からの基地関連収入は240億円を超え、公共施設や住民サービスは充実した。

 「沖縄で一番便利で裕福な離島になった」。容認派の男性が話すように、島袋さんの判断を支持する村民は少なくない。

 もう一つ、問題を複雑にしているのが地権者に支払われる軍用地料。補助飛行場(約800ヘクタール)のうち、フェンスで立ち入りを規制するのは約350ヘクタール。それ以外は、地料を得ながら営農や居住もできる「黙認耕作地」「黙認住宅地」だ。

 過去にフェンス外の地権者が返還を求めたところ、虫食いのようにその土地だけ返された。約1800人が受け取る年間地料は約16億円。ある地権者は「基地は反対だけど、返還されて地料が入らなくなるのも困る」と漏らす。

 「軍用地は1番人気の高い収益物件です」。不動産会社のホームページには補助飛行場内の土地の売買情報が並ぶ。返還の見込みが低い「フェンス内」ほど利回りが高く人気だという。

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 「踏み絵を踏まされた伊江島は、これ以上何を押しつけられても反対できないと思われているよ」。平安山さんは不安を募らせる。

 村は米軍普天間飛行場(宜野湾市)の受け入れは拒否した。ただ、移設予定地の名護市辺野古は、埋め立て海域に軟弱地盤が見つかった。代替地になる懸念は拭えない。「島や役場に戦闘機が墜落して被害でも出ない限り、島が置かれた現状に気付けないんだろう」

 沖縄の縮図-。島は基地に翻弄(ほんろう)され続ける。 (高田佳典)

 駐留軍用地特措法 日米安全保障条約に基づいて在日米軍基地に土地を提供するための法律。国は地権者から土地を賃借して米軍に提供するが、契約に応じない地権者に対しては、この法律を根拠に収用委員会の裁決を受けて使用する。地権者には損失補償(地料)が支払われる。

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