五郎丸、引退は「始まり」 海外の経験糧に磨く人間力

 3歳から始まった楕円(だえん)球の道はピッチ外で終止符を打つことになった。今季限りでの現役引退を表明していた五郎丸。日本ラグビーの歴史を変え、その人気をけん引した使命感あふれる「漢(おとこ)」が静かにジャージーを脱ぐ。

 2年前。ワールドカップ(W杯)日本大会開幕に向けた西日本新聞での不定期連載のインタビュー企画に応じ、定期的に話をしてもらった。頭の中はラグビーで埋め尽くされているはず。そんな勝手なイメージは、いい意味で覆された。

 佐賀工高から早大で3度の大学日本一。日本代表57キャップ。2015年W杯の南アフリカ戦で歴史的勝利に貢献し「五郎丸ポーズ」で国民的英雄となった。ラグビーにささげてきた人生と言っても過言ではない。

 だが「人生には他にもいろんなことがある」と否定した。15年のW杯後にオーストラリアとフランスでプレーした経験で、人として文化的で豊かな生活があってこそのラグビーだと気付かされたという。「それまでは勝つこと、結果を残すことが全てと思い込んでいる自分がいた」

 接した海外の選手は考え方が柔軟でオンオフの切り替えがうまい。競技そのものを楽しみ、たとえピッチに立てなくても自らを追い込むことに迷いがない。彼らから人としての器の大きさを感じた。人間力を磨く-。人生の一つの答えが出た。

 現役ながら「ラグビーの発信役」として、畑違いの場所にも見える九州国立博物館でトークショーをしたり、柔道男子日本代表の井上康生監督らと小学生対象のスポーツキャンプをしたりした。愛するラグビーを通じ、人としてどう成長できるかが心の芯にある。そして35歳で第一線を退く初志貫徹の決断もその延長線上にある。

 一見、不本意に映る今回の“終幕”も平然と受け止めたに違いない。20日の自身のツイッターに「僕の引退に『終わり』を見る人がいるかもしれない。これは『始まり』。どんな立場であれ『不可能』なんてありえない」などと記していた。不器用を自認する男。これからも自らの意志に忠実に、そして武骨に突き進むのだろう。

 (大窪正一)

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