災害関連死 「助かった命」を守り抜け

 「助かった命」を最後まで守り抜かねばならない。発生から5年となった熊本地震が突き付けた大きな教訓の一つだ。

 観測史上初めて震度7を2回記録したこの震災では、計276人が亡くなっている。そのうち圧死など地震による「直接死」が50人なのに対し、避難生活を通じた心身不調などで亡くなった「災害関連死」は226人と全体の8割に上る。

 災害関連死という概念は阪神大震災(1995年)の際に提唱され始めた。東日本大震災(2011年)も阪神と同様に犠牲者の2割弱が関連死に該当した。両震災は死者数が桁違いに多いため一概に比較はできないものの、熊本地震での関連死の多さやその要因は引き続き丁寧に分析していく必要がある。

 熊本県の益城町、阿蘇市、南阿蘇村といった震災被害が大きかった地域ほど関連死の報告も多い。大きな余震が続き、恐怖心や運動不足から持病を悪化させた高齢者が少なくない。

 さらに指摘したいのが地震直後の避難所の混乱である。避難者は熊本、大分両県で最大20万人近くに達した。予期せぬ大地震に物資や衛生面だけでなく、避難先のストレス対策などにはとても手は回らなかった。

 益城町総合体育館は廊下や階段の踊り場まで人々で埋め尽くされ、最大千数百人が長期の避難生活を強いられた。

 いち早く駆けつけた災害派遣医療チーム(DMAT)やボランティアは大いに貢献した。一方で、避難所での1人当たりの面積、トイレの設置状況や男女別の必要数などの国際基準(スフィア基準)には程遠かったのも事実だ。新型コロナ禍では「密」回避がより重要である。

 東日本大震災では、避難者が自殺するケースが発生10年後の今日も相次いでいる。家族や故郷を失った心痛が響いているとみられ、「心の復興」が容易ではないことを示している。

 支援員が仮設住宅などを回って被災者を見守る自治体の制度があるものの、ようやく再建できた自宅への入居後に不調を訴える人もいる。長期的な視点で寄り添うケアが必要だ。

 災害に起因する関連死に当たるかどうかの認定は、自治体に委託された医師や弁護士らが行う。認められれば遺族に弔慰金が支払われる。ただ当事者の被災状況や病歴、住環境などを総合的に判断するため、国は統一基準を示せていない。自治体で認定率にばらつきもみられる。早急に改善を重ねてほしい。

 肝心なことは「命は守り抜く」環境を平時から整えておくことだ。近年多発する災害で生じた関連死を教訓として多角的に検証することが求められる。

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