戦争体験離れ、コロナで拍車 修学旅行激減、沖縄の資料館苦境

 太平洋戦争で住民を巻き込んだ地上戦が繰り広げられ多くの犠牲者が出た沖縄県で、民間の平和資料館が苦境に立たされている。新型コロナウイルスの感染拡大で昨春以降、修学行生を中心に入館者が大幅に減少。戦争体験の風化が懸念される中で、収まらないコロナ禍が追い打ちとなっている。「平和学習の拠点をなくすわけにはいかない」。各施設は使命感を胸に、体験の継承と安定運営の両立に向けて模索する。

 「戦争の犠牲になるのは子ども。そのことを伝え続けるためにも、絶対につぶすわけにはいかない」。対馬丸記念館(那覇市)を運営する公益財団法人の理事長高良政勝さん(80)は悲壮感をにじませた。

 沖縄からの疎開学童や一般疎開者ら1788人を乗せた対馬丸は1944年8月22日、鹿児島県悪石島沖で米潜水艦の攻撃を受け沈没。判明者だけでも1484人が亡くなり、半数以上は国民学校の学童だった。4歳で船に乗った高良さんは生き残ったが、両親ときょうだいの9人を失った。

 2004年に開館した記念館は、コロナの影響で20年度の入館者が前年度比7割減の6千人台にとどまった。今年3月以降、苦境を知った県内外の個人・団体に支援の輪が広がり、約160万円の寄付が集まった。それでも高良さんの不安は消えない。「私たち遺族も高齢化し、いつまで運営に携われるか分からない。国や県に安定して維持できる仕組みを整えてほしい」

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 県の観光統計実態調査では、「戦跡地参拝」が目的の観光客は03年度には15%を超えていた。それが「コロナ前」の19年度には既に7%台まで減少。戦争が遠くなったことに加え、沖縄観光の多様化も背景にあるとみられる。

 沖縄戦に動員された「ひめゆり学徒隊」の体験を伝えるひめゆり平和祈念資料館(糸満市)も1999年度に100万人を超えていた入館者が2019年度は49万人に減少。20年度は修学旅行の中止が相次ぎ、さらに86%減の6万6676人に落ち込んだ。

 同館は今年4月、若い人にも伝わる展示を目指して戦後生まれの職員を中心にリニューアルしたが、全国的な感染拡大が重なり予約キャンセルが続く。公的補助を受けず、入館料を主な財源にしているだけに経営への影響は深刻だ。「『伝えることで戦争を否定してほしい』という元学徒の思いを次世代に渡すことが私たちの仕事。コロナで資料館がなくなれば顔向けできない」。学芸員の前泊克美さん(43)は苦悩する。

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 一方で、来館できない人向けの取り組みも始まっている。ひめゆり資料館は昨年11月から職員によるオンラインでの講話を始めた。海軍兵約4千人が戦死した旧海軍司令部壕(ごう)(豊見城市)を運営する沖縄観光コンベンションビューローも、壕を紹介する3Dパノラマ画像を公開している。

 司令部壕の20年度の入館者は前年度比74%減の3万3千人。修学旅行は360校から25校に減った。屋良朝治所長(62)によると、3D画像の公開は、沖縄に来られない子どもに平和学習の場を提供するため。コロナ禍を機に修学旅行先を近場に変更し、収束後も沖縄に来なくなることを案じているという。

 「戦争体験がどんどん風化する中で私たちの使命は重い。若い人に二度と戦争をしてはいけないと感じてもらうためにも、知恵を絞って修学旅行をつなぎとめないといけない」。施設の運営に携わる全ての人たちの思いでもある。 (那覇駐在・野村創)

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