あの日の春秋:こどもの日(2008年5月5日)

4階にある自宅から小学校の校庭が見える。朝起きて窓を開けると、平日は授業開始前に校庭で遊ぶ子どもたちの声が聞こえてくる。一日の始まりに元気な声を聞くのは気持ちがいい▼朝に限らず元気にしてくれる声を町のあちこちで聞けた時代が、そう遠くない過去にあった。空き地や路地裏で遊ぶ声、はしゃぐ声…。いまは、聞けても、学校以外では公園ぐらいだろうか▼東京地裁八王子支部は昨年秋、公園の子どもの声を「騒音」と認定した。噴水の周りで水遊びに興じる歓声が「苦痛」と近所の人が訴えた。計測してみると東京都の騒音規制基準値を超えていた。噴水はすぐに止められた▼子どもの声を騒音と感じる人が増加中。公園や校庭で遊ぶ声に対する苦情が各地の自治体に寄せられている。遊ばせる時間を縮めた学校もある。苦情は幼稚園にも届く。種々の事例を各紙の報道で知る昨今だ▼明治期に来日した外国人は、日本の子どもくらいのびのびと遊び、大事にされている国はほかにないと見聞記に書いた。金や銀も大切だが子に勝る宝はない、と万葉歌人が詠んで以来変わらぬ日本の風景といってよかった▼思えば除夜の鐘にも「うるさい」と苦情が舞い込む時代だ。一部での話にしろ、日本的な風景の回路が変調をきたし始めている。子はかすがい、と言う。隣近所や地域にとってのかすがいでもあってほしい。「こどもの日」にそんなことも考える。(2008年5月5日)

 論説委員より ことし4月1日時点での14歳以下は前年より19万人少ない1493万人。40年連続の減少だ。さらに新型コロナ禍。感染対策で子どもも在宅時間が増えた。屋外で元気な声を聞くこともめっきり減った気がする。福岡県鞍手町の高1男子(15)が今学校で一番したいことは「マスクを外して友人と談笑すること」と本紙に。外で遊んで「騒音」と叱られてはかわいそうだが、マスク越しに声を潜めなければならない今の子どもたちは…。(2021年5月9日)

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