先細る若手官僚 本分は「全体の奉仕者」だ

 この国の屋台骨を支える官僚機構「霞が関」の足元が揺らいでいる。志願者が急減し、若手職員の離職が止まらないのだ。官僚の人材の先細りは国の将来にも禍根を残しかねない。

 2021年度の国家公務員総合職、キャリアと呼ばれる中央省庁の幹部候補の採用試験に志願したのは、前年度比14・5%減の1万4310人だった。志願者の減少は5年連続で、本年度の減少率は過去最大だ。

 採用され現場を経験した後の離職も目立つ。19年度に自己都合で退職した20代キャリアは86人に上り、6年前の4倍以上に増えた。内閣人事局が昨年6月にまとめた調査では、30歳未満の国家公務員のうち男性の14・7%、女性の9・7%が数年以内に辞職したいと回答した。

 社会に貢献しようと仕事を選んだ若者が志半ばで挫折する。極めて残念な現象だ。政府には踏み込んだ対応を求めたい。

 要因はいくつか指摘される。まずは長時間勤務だ。人事局の昨年10~11月の調査によると、20代キャリアのうち、正規の勤務時間外の在庁時間が月45時間を超えたのは3人に2人、過労死ラインとされる80時間超えも3人に1人に達している。

 働き方改革は社会全体の課題であり、国の施策を推進する霞が関が率先すべきだろう。

 長時間勤務の大きな原因が国会対応だ。質問に立つ議員から事前通告を受け答弁を準備するが、2日前の正午という一応の期限は形骸化し、前日深夜まで準備に追われることは珍しくない。質問主意書という文書での照会も増えている。答弁書は閣議決定が必要で負担感は強い。

 政府、与党だけでなく野党も足並みをそろえ改善したい。

 中央省庁は政権が目玉政策を打ち出すたびに仕事は増えるのに、本来業務は従来通りこなさなければならない。霞が関を巡る不祥事も続き、こうしたマイナスイメージの積み重ねが、若い世代の官僚離れを助長していることは間違いあるまい。

 不祥事の背景には、より構造的な問題も浮かんでくる。公文書改ざんといった公務員の常識の底が抜けたような行為に見られる、政権への過剰な忖度(そんたく)だ。

 安倍晋三前政権による14年の内閣人事局設置で、首相官邸が省庁の幹部人事を握った。菅義偉首相も政策に従わない官僚の異動を公言してきた。

 人事権者の顔色をうかがうことに汲々(きゅうきゅう)とし、世間からはバッシングを受ける。そんな官僚の今の姿に、志ある若い人はやりがいを見いだせまい。憲法15条が規定する「全体の奉仕者」という公務員の本分に立ち返り、国民のために働くまっとうな姿を取り戻さなければならない。

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