コロナ禍、感染症への差別を教訓に 弁護団共同代表「排除許されぬ」

 隔離政策を違憲と断じ、ハンセン病元患者が「人間回復への第一歩」と涙した歴史的な熊本地裁判決から20年。その国家賠償請求訴訟で、西日本弁護団共同代表を務めた徳田靖之弁護士(77)は「当事者が人間の尊厳を取り戻した」と判決の意義を改めてかみしめる一方、元患者らの被害回復は道半ばにあると指摘。コロナ禍に感染症と差別の問題が顕在化する中、「ハンセン病問題の教訓を絶えず意識すべきだ」と強調する。

 忘れられない光景がある。1998年11月、国賠訴訟の第1回口頭弁論後の報告集会。「沖縄に生まれ、療養所に連れてこられました」「療養所に隔離され、父親の死に目にも会えなかった」。会場の隅にいた原告たちが次々とマイクを握り、半生を語った。多くの支援者を前に勇気づけられた原告たち。徳田弁護士は、人間の尊厳を取り戻す過程を目の当たりにした。

 そして2001年の熊本地裁判決。判決を機に元患者らへの補償はある程度進んだが、徳田弁護士は「社会に深く根を下ろした差別偏見の問題が大きく残っている」とみる。家族が元患者であることを理由とした結婚拒否や離婚が現実にある。ハンセン病に関する人権教育の不十分さに歯がゆさを感じている。

 「ハンセン病問題は今、被害と名誉の回復に向けた最終段階にある」。国は今後、「施策検討会」を発足させる。徳田弁護士は「検討会では現在の差別偏見の構造と、これまでの啓発や教育の問題点を分析することが重要だ」と訴える。

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 ハンセン病問題には法律家として自責の念も強い。

 熊本地裁判決は「遅くとも60年以降、隔離の必要性は失われ、らい予防法の違憲性は明白だった」と指摘した。徳田弁護士は「らい予防法の廃止と国賠訴訟が遅すぎたことが、回復できない大きな被害につながった」と痛感している。

 問題が放置され続けた背景には「法曹界も含め社会全体が加害者で、それぞれが加害責任を認めることができなかった」と考える。「自ら検証する姿勢をどれだけ持つか」が、ハンセン病問題の長い歴史が問い掛ける教訓の一つだという。

 感染症と差別偏見の問題は、コロナ禍でも感染者や医療従事者に対して現れている。「感染症患者は社会に危害を加える迷惑で危険な存在で、排除は仕方ないという考え方を正当化していないか。人間としての尊厳を傷つけることは、いかなる場合でも許されない」

 (森亮輔)

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