地図アプリに載らない「強制収容所」を訪ねてみた

抑圧の街から 新疆ウイグルルポ㊤

 米中「新冷戦」を背景に、米政府は新疆で「ジェノサイド(民族大量虐殺)」が行われていると指弾し、中国は「世紀のでたらめだ」と猛反発する。新疆でも特にウイグル族が多いカシュガル地区に入り“抑圧”の実態を探った。3回に分けて報告する。(カシュガルで坂本信博)

 目的地の1・5キロ手前でタクシーは止まった。「これ以上先には行けないことになっている」。男性運転手が言った。理由を尋ねても「知らない」と首を振り、困ったように苦笑いするだけだった。

 4月下旬、中国西端にある新疆ウイグル自治区カシュガルの郊外。目的地には「強制収容所」があるはずだった。中国政府による少数民族ウイグル族弾圧を調査しているオーストラリア戦略政策研究所の報告書が「最も管理が厳重」と分類する施設だ。車を降り、中国版の地図アプリを開いたが、付近の拡大地図は灰色になって使えなかった。

 頼みの綱は、研究所が公開する衛星画像だけ。中央アジアの乾いた日差しが照りつける中、ポプラ並木の農道を10分ほど歩くと、れんが色の高い塀が見えた。手前で2人の男が道の真ん中に立ち、検問をしている。胸に無線機を付け、頭上には監視カメラがあった。

 「記者か? 引き返せ。写真は撮るな」。男たちは険しい表情で繰り返した。

 研究所の報告書によると、新疆の「強制収容所」は380カ所以上。米政府は「100万人以上が収容された」と指摘する。一方、中国当局は収容所ではなく「職業技能教育訓練センター」だと主張。テロを防ぐため、イスラム教徒のウイグル族から過激思想を取り除き、中国語や法律、職業技能を教えたとする。

少数民族ウイグル族らの「強制収容所」と指摘される施設(奥)の手前で検問をする男たち。頭上には監視カメラがあった

 中国政府が昨年9月に公表した新疆労働就業保障白書には「2014~19年に年平均128万8千人が職業技能教育訓練を受けた」との記述がある。双方の主張は大きく異なるが、入所者の数はほぼ合致する。

 中国側は19年で事業を終え、訓練センターも全てなくなったとする。では、塀の向こうには何があるのか。男たちは立ち入り禁止の理由を一切語らなかった。

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