「帰国すれば命ない」入管法改正におびえる難民申請者

 難民認定申請中でも外国人の強制送還を可能とするなど、外国人の収容や送還ルールを見直す入管難民法改正案。国際人権規約に反するという批判が高まる中、与野党の修正協議は決裂し、近く衆院法務委員会で採決される見通しとなった。日本の難民認定率は1%前後。国内には難民としての保護を求めながら在留資格を失った外国人も多く、固唾(かたず)をのんで国会論戦の行方を見守っている。

 「家族は安全を求めて国内外に散らばった。今は居場所も分からない」。長崎県大村市の支援者宅に身を寄せるネパール人女性(29)はそう語る。

 内戦が続いた母国で、現政権に反対した家族は地元住人から嫌がらせを受けた。寝静まった夜、十数人が家の壁や窓をたたき、家に侵入されて殴られたこともあったという。耐えかねた妹は自ら命を絶った。

 東京都八王子市に住んでいた知人のネパール人男性を頼って2016年に来日。永住権を得たこの男性と結婚し、配偶者として在留資格を得て暮らしていたが、昨年離婚し、在留資格を失った。難民申請は却下され、現在は不服申し立ての審査請求中。認められなければ不法滞在者として強制送還される可能性がある。

 「国に帰って殺されろとでも言われているよう」

 現行法では難民申請中の外国人は強制送還されないという規定があった。政府の改正案は難民申請を原則2回までに制限し、理由が同じなら3回目以降は送還できるようになる。

 入管庁によると19年に日本で難民申請をした外国人は1万375人。うち4・4%が過去にも申請していた。入管庁は法改正の理由について「同じような主張で申請する外国人は難民として保護されるべきではない」と説明する。

 19年の難民認定率は0・4%。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によるとカナダは55・7%▽英国46・2%▽米国29・6%▽ドイツ25・9%▽フランス18・5%-などとなっており、日本は著しく低い。

 なぜか。NPO法人難民支援協会(東京)によると、諸外国では本人の証言と出国地の情勢で認められるのに対し、日本では原則として実際に命の危険があることを証明する物証や証人が必要となる。担当者は「命の危険がある中で証拠を用意して来日している人は少ない」と指摘する。

 強制送還される外国人を一時的に収容する大村入国管理センター(大村市)には4月末時点で30人が収容中。3回目の難民申請中のスリランカ人男性(39)は「国内の暴力団の恨みを買い、04年に外国への避難を決めた」と言う。仲介業者を頼って逃げた先が日本。難民認定率の低さは知らなかった。

 「業者にだまされた。帰国すれば命はない」

 センターの外国人を支援する川田邦弘さん(69)=同市=は「難民審査など、問題が指摘されている制度を前提にした法改正では意味がない。国際的な基準に照らし、根本的に入管行政のあり方を見直すべきだ」と話す。 (西田昌矢)

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