デジタル改革法 個人情報の「活用」に懸念

 個人情報の集積が加速し、利便性向上が期待できる半面、データ流出や不正利用の懸念は高まる。にもかかわらず歯止めや監視体制が十分とは言い難い。

 先週成立したデジタル改革関連法のことである。

 9月に発足するデジタル庁を司令塔に、地方自治体も含めてシステムを標準化し、行政サービスのオンライン化を図る。マイナンバーの利用範囲を広げ、公的給付金の支給などにも活用できるようになる。

 行政のデジタル化の遅れを挽回し、国民の使い勝手を高めることは必要だ。折しも新型コロナウイルスのワクチン予約を巡る混乱が各地で続く。こうした手続きも効率化できるはずだ。

 気になるのは、政府が新しいビジネスやサービスの創出に向け、行政が持つデータの民間活用に前のめりの点だ。「相当の理由」があれば、個人情報の目的外利用も可能になった。

 参院審議では、国が持つ情報を匿名加工して民間に提供する事業に関し、基地訴訟の原告や国立大の授業料免除者についての情報も対象となっていたことが明らかとなった。

 情報の取り扱いが適切かどうかの監督、監視には、政府の個人情報保護委員会が当たる。民間中心だった監督対象は自治体を含む行政機関にも広がる。民間には立ち入り検査や「命令」も可能だが、行政には強制力のない「勧告」までしかできない。

 職員数は約140人で、無料通信アプリLINE(ライン)利用者の個人情報が中国で閲覧可能だった問題では対応が後手に回った。体制強化は急務だ。

 デジタル庁の体制にも懸念は残る。実務を取り仕切るポスト「デジタル監」は民間から起用し、職員約500人のうち120人程度をIT企業などから採用する予定だ。個人情報の厳正な取り扱いはもちろん、出身企業の利害が絡むことなどあってはならない。

 今回の立法に際して、個人情報保護の手だてもセットで規定されるべきだった。けれど現実はむしろ後退さえ危ぶまれる。

 1984年の福岡県春日市を皮切りに、自治体は個人情報保護条例を制定してきた。自らの情報の取り扱いは自分で決める「自己情報コントロール権」を盛り込んだものもある。

 今回の法律で、データの流通に対応した全国共通のルールができる。条例など自治体独自の措置が制約される恐れがある。

 市町村は生活保護など機微に触れる情報を扱う中で独自の措置を積み上げてきた。より緩い国の規定に合わせて損なわれるものはないか。地方自治の理念からも、今後のルール作りに住民も目を光らせる必要がある。

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