入国できず内定取り消し…「日本で職を」韓国学生、コロナ下の就活苦境

 新型コロナウイルス禍の長期化で、韓国人学生の日本企業への就職活動が厳しさを増している。近年、就職難が続く韓国国内を避け、日本で働き口を探す学生が増えているが、コロナ禍に伴う景気の冷え込みで求人数は減少。内定を得たのに日本の就労ビザが下りず、採用を取り消されるケースも出ている。(釜山・具志堅聡)

 「就活がゆううつです」「私も同じ気持ち」。5月中旬、釜山外国語大(釜山市)の4年生ら23人がオンラインで語り合った。日本企業への就職を目指す韓国人学生が自主的に参加する永野亜季副教授のゼミで、日本人学生も参加し履歴書の手直しや面接対策に取り組む。

 日本のアニメや文化が好きで高校2年から日本語を学ぶゼミ生のカンさん(24)は、日本のIT企業のエンジニアを志望する。昨春、福井大に交換留学する予定だったが、コロナ禍で中止になった。「就職は浪人してでも日本企業に入りたい」と既に5、6社にエントリーシートを送ったが、連絡はない。「2年近い兵役のため日本人学生よりも年齢は上。就職できないとさらに遅れてしまう」と焦りをにじませた。

 釜山外国語大は2019年まで日本企業をキャンパスに招いて就活イベントを開いてきた。永野副教授は「求人はコロナ前の半分以下になった印象。コロナの収束が見えない中、今年は各社とも採用数を絞ってくる」とみる。

パソコン越し「孤独」な新人研修

 釜山市内の大学を卒業した韓国人男性(26)は4月、東京のIT企業に入社したものの、就労ビザが取得できず、訪日できない状態が続く。オンラインで新入社員研修を受けているが、同期の韓国人は自分だけ。パソコンの画面越しでは意思疎通しづらく、親睦を深められない。チーム作業は特に難しく感じる。

 「生活に慣れるためにも、なるべく早く日本に行きたい」と願うが、ビザのめどは立たない。研修は6月まで。その後の配属や業務には不安ばかりが募る。

 それでも「入社できただけで運が良い」と男性。周りには入国できずに内定が取り消された学生が複数いる。大学関係者によると、20年春に採用予定だったがビザが取得できず、1年以上たった今も入社を待ち続ける内定者がいるという。

韓国内も就職難、突出する若者の失業率

 韓国の15~24歳の失業率(今年3月時点)は9・7%。全体の失業率3・9%を大きく上回る。財閥など大企業の正社員や公務員を目指し、多くの若者が就職浪人しているのが実情だ。

 政府は若者の失業解消に向け、海外就職支援事業「K-ムーブ」に力を入れる。大韓貿易投資振興公社によると、日本に就職した韓国人は19年に2469人となり、15年の3・9倍に急増。日本は2位の米国を約950人上回り、最大の受け皿になった。

 今はコロナ禍で採用に消極的だが、日本企業にとっても韓国人学生は貴重な人材だ。ソフトウエア開発のパイオニア・ソフト(福岡市)はこれまでに約20人の韓国人を採用。今春も1人が入社した。森永洋昭社長は「韓国人は国際化への意識が高く、英語や日本語を自由に操れる人材が多い。今後も人物本位で採用を続けたい」と語る。

日本のコロナ対策「不安を感じる学生も」

 ニッセイ基礎研究所(東京)のキムミョンジュン主任研究員は「労働力不足の日本では今後、韓国人採用が拡大していく」と見通す。ただ、韓国の平均賃金は、物価などを考慮すれば日本より高いというデータもあり、日本で働く魅力は薄まりつつある。「世界ではIT分野などで優秀な人材を奪い合っている。年功序列では優秀な若者の確保が難しく、日本も能力に見合う仕事を提供するよう努力すべきだ」と指摘する。

 コロナ対策の不十分さもネックになる。新羅大(釜山市)の担当者は「日本の感染状況は深刻で安全に不安を感じる学生も多い。日本への就職を希望する学生が集まりにくくなっている」と明かした。

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