「遅咲きでいい」まっすぐ役に向き合う 舞台俳優・荒木ロンペー

シン・フクオカ人 #36

 〈何をするにしても、素直さが一番の財産なのかもしれない〉

 特攻隊の戦闘服を着た真っすぐな瞳が、当時の若者と二重写しになる。

 舞台俳優の荒木ロンペー(26)は、6月に福岡市で上演される演劇のため、ゴールデンウイーク明けに東京から帰省した。

 準主役で、学徒出陣した特攻隊員を演じる。「後の世の中をよろしく頼みます」という言葉を残し、若い命を散らすくだりは、実際にあった出来事だ。

 「その誠実さには感銘を受けます。逃げられない運命だとしても、自分だったら向き合えるかどうか」

 そんな青年になりきるため、丸刈りにして稽古に励んでいる。

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 人前に立つことに興味を持ったのは、小学6年の学習発表会がきっかけだった。「プロ野球選手になりたいのに、どうしたらなれるか分からないよ~」。将来の夢を素直に表現したのが、なぜか大うけ。拍手喝采を浴びた。

 高校進学にあたり、あらためて両親と将来について話し合った時、そのことを思い出した。早速、福岡市のタレント養成所に入って演技やダンスを学んだ。高校1年の夏には、物語の鍵を握る役で舞台デビュー。ミュージカルやラブコメディー劇でも腕を磨いた。

 高校を出ると、まず大阪へ。居酒屋でアルバイトをしながら、小劇場のオーディションを受け続けた。「目に力がある」「どこにでもいそうな素直な感じがいい」と評価された。

 「何も考えずに目の前の芝居に打ち込めて、本当に楽しかった」

 1年半で8作品に出演し、余勢を駆って上京。事務所に所属することができ、テレビCMなどの声が掛かった。名の知れた俳優たちと舞台を共にして、手応えもあった。「東京でも頑張れば大丈夫かな」と気楽に考えていた。

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特攻隊員の岡部平一を演じる荒木ロンペーさん(中央)=2020年9月の舞台

 ところが、そんなに甘い世界ではなかった。大きな仕事が回ってこないのだ。

 何とかアピールしようと、2019年秋に仲間と動画配信を始めた。東南アジアの観光地を紹介していたが、新型コロナウイルスの流行で現地に行けなくなり、閲覧数も伸び悩んだ。

 そんな中で救いとなったのが、20年9月に福岡県内で上演された舞台「PEACE HILL」だった。戦後間もなく福岡市に平和台陸上競技場を創設し、国体を成功させた実在の人物、岡部平太の物語。その長男、平一を演じた。

 劇中、平太がこう語りかけるシーンがあった。

 「戦争は終わった。だが苦しい時代は続く!」。不安におびえ、学校にも会社にも行けなかった人々を鼓舞する。「ただただ、生きるために耐えてきた! さあ進もう」

 舞台がコロナ禍で2カ月延期され、現代のへいそくかんを重ね合わせた脚本に変わった。感染対策にも神経をすり減らす公演だったが、カーテンコールの拍手を聞いて報われた思いがした。

 「劇団員みんなで乗り越えられたんだと思うと、味わったことのない感情が込み上げてきて心が震えた」

 6月に控える舞台は「PEACE HILL」の続編。同じ平一の役で呼ばれた。遅咲きでいい、「あの作品にもこの作品にも出演してるよね」と言われる役者になりたい。目標はムロツヨシだ。

 =文中敬称略(加茂川雅仁)

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 「PEACE HILL 2~東京オリンピック奮闘記~岡部平太物語」は6月3~6日、福岡市・天神の西鉄ホールで上演する。前売り3500円、当日4千円、動画配信2500円。問い合わせは劇団ショーマンシップ=092(716)3175。

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