増える生活保護 コロナ禍に耐える制度に

 感染症のパンデミック(世界的大流行)という非常時に、弱者の暮らしを「公的」にどう支えるのか。長期化する新型コロナ禍が日本社会に突き付けている深刻な課題の一つである。

 生活保護の申請数が増加を続け、この2月は1万7千余と前年同月から約8%増えた。前年同月比増は6カ月連続となる。コロナ禍による困窮者の増加を反映しているとみられる。

 生活保護法は、憲法25条が定める「健康で文化的な最低限度の生活」の保障を具体化するものだ。要件を満たす限り、保護を「無差別平等」に受けられる原則を掲げている。

 受給者数は景気にほぼ連動して増減し、近年では2015年の約214万人をピークにその後は減少傾向にあった。

 社会の安全網(セーフティーネット)として欠かせない制度だ。ただし法の根本は、年金など一定の収入を得てもなお国の生活扶助基準に達しない人の保護である。最終的な目的は「自立を助長すること」にある。

 現在のようにコロナ対応策として、働く意欲も能力もありながら行政の要請で営業自粛が強いられる事態は想定外だろう。

 国は昨年、1人一律10万円の特別定額給付金や自営業者などに向けた持続化給付金を急きょ打ち出した。行政のデジタル対応の遅れもあって申請時に混乱は生じたものの、臨機応変の安全網の構築だったとは評価できるだろう。一時的には生活保護の申請数も落ち着いた。

 現在の感染拡大の第4波は、昨年から暫定的に張られてきた安全網を破りつつあると考えるべきだろう。将来的にはさらに深刻な経済危機が到来しないとも限らない。そうした緊急時にいかに対応するのか。財源を含めた長期的な制度設計の検討を始めねばならない局面だ。

 注目の集団訴訟が29都道府県で起きている。13~15年の生活保護基準額の引き下げは憲法25条に違反するとして、受給者が国と自治体に引き下げ処分の取り消しなどを求めた訴訟だ。

 既に四つの判決が出され、原告の主張が認められたのは大阪地裁だけだ。12日の福岡地裁判決も請求を棄却した。国に裁量権の逸脱はなく、生活水準も違憲状態でないと判断した。

 憲法がうたう最低限度の生活とは何か。その議論は時々の社会状況にも影響される。今回の一連の訴訟はコロナ禍前の引き下げ処分を巡るものだが、テレビやパソコンの所有は認められるのかが争点の一つだった。

 法廷での論争とは別に、あるべき制度を目指す議論を深めたい。生活保護の在り方は国の社会保障の施策全般に影響する。社会の根本に関わる問題だ。

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