世界遺産候補「やんばる」に米軍基地の影 絶えぬ騒音、廃棄物被害も

 国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関が今月、世界自然遺産への登録を勧告した「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」(鹿児島、沖縄)。7月にも正式決定する見通しだ。このうち希少な動植物に恵まれ「奇跡の森」と称される沖縄島北部の登録候補地は、米海兵隊の訓練場が隣接する。ヘリコプターの騒音や振動が絶えず、空包など米軍由来の廃棄物の発見も相次ぐ。地元では待ち望んだ吉報に喜びが広がる一方で、自然環境への影響や墜落事故を懸念する声も強い。 (那覇駐在・野村創、高田佳典)

 森には1億年前から生息するという巨大なシダ植物ヒカゲヘゴが群生し、亜熱帯の雰囲気を醸し出す。奄美から沖縄にかけて分布する木、アマミアラカシも見えた。「この木はどんぐりを落とします。沖縄では建築材に使われています」。候補地に近い沖縄県大宜味(おおぎみ)村の登山道で、ガイドの松川隆行さん(70)が説明してくれた。

 登録を勧告された沖縄島北部の候補地は同県国頭(くにがみ)、大宜味、東の3村にまたがり、面積は7721ヘクタール。地元では古くから「やんばる(山原)」と呼ばれてきた。大陸から島が分離する過程で生物が独自の進化を遂げ、鳥類のヤンバルクイナなど絶滅の恐れがある固有種が数多く生息する。

 松川さんは同県宮古島出身。琉球大に進学し、民俗学の研究でやんばるを訪れるうちに、宮古島にはない奥深い森に魅了された。卒業後は社会科教諭となり、大宜味村の高校に赴任した。折に触れて雄大な自然を体感し「将来はここに住もう」と思うようになった。30年ほど前に村に家を建て、退職した10年ほど前から「地域に貢献したい」とガイドを始めた。

 「多様で希少な動植物が生息し、世界遺産にふさわしい場所と思っていた。本当にうれしい」。勧告を前向きに受け止める松川さんだが、「単純に喜べない」事情もある。候補地に広さ約3700ヘクタールの米軍北部訓練場が隣接していることだ。

 訓練場周辺ではこれまでにもヘリの墜落事故や炎上事故が発生。2016年に返還され、一部が候補地に加わった訓練場跡地からは大量の空包や鉄板、放射性物質を含んだ通信部品も見つかった。「国立公園でガイド中に、頭上を米軍のヘリが低空飛行することもある。無視できる問題ではない」。松川さんは憤る。

 県も黙認しているわけではない。今月14日、沖縄防衛局に対し、廃棄物調査と撤去、区域外での演習・訓練の中止、騒音の軽減などを要請した。防衛局は「要請を踏まえ、米側にも協力を依頼している」と説明するが、米軍がどこまで配慮するかは不透明だ。

 それでも松川さんは登録をきっかけに、やんばるに対する関心が高まることを期待している。「素晴らしい場所に自然を壊す基地はふさわしくないという思いが、訪れる人に広がり、大きくなれば、基地の撤去につながるはずです」

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