コロナ禍の寄席守れ!党派超え心よせる落語議連 はなし家が窮状訴え

東京ウオッチ

 新型コロナウイルス感染症の影響で、多くの文化芸術団体が活動自粛を余儀なくされているが、落語界もその一つ。国会には落語愛好家議員による超党派の「落語を楽しみ、学ぶ国会議員の会」(落語議連)が存在しており、5月20日にははなし家たちから現状をヒアリングして支援につなげていく場が持たれた。普段は、面白おかしく政治を風刺し皮肉るのが演芸の世界だが、コロナ禍の苦境にあって演者は政治家と心を一つにする。「日本の伝統芸能の灯は消さない」と。

 20日、国会内の会議室。落語議連の役員会には、落語協会(東京)の柳亭市馬会長=大分県出身=や、上方落語協会(大阪)の桂米団治副会長ら、そうそうたる顔ぶれが並んだ。

 市馬師匠が着座し、話を切り出そうとすると、議連会長で自民党の遠藤利明元五輪相がすぐさま「座布団ないですけど」と合いの手を入れ、席を温める。ぱっと笑いの花が開いて落語議連らしい一幕となったが、その後のやりとりは真剣そのものだった。

 「1人お見えになって、いくら(お代を)いただけるといういまだに歩合な制度。寄席ははなし家の土台で、あって当たり前。空気で、水で、もう地べたみたいなもので、それができなくなると、はなし家は商売ができなくなります」

 市馬師匠は寄席をそう形容し、言葉を継いだ。

 「落語が好きで集まっている先生方に心配させて悪いと思うんですけれども、頼るところも他にございませんで、何とか一つ、この寄席の存続を心からお願いしたい」

 落語界は、昨春からの3回にわたる緊急事態宣言により、演芸場の休業や入場制限で青息吐息となっている。議連メンバーからも「寄席に出向いたが、客が20人くらいしかいなかった」との声が出るほど演芸場は閑散。例えば、浅草演芸ホール(東京)は寄席の興行収入が前年から7~8割減少し、各協会が行う地方公演もどんどん中止に追い込まれているという。

 米団治師匠も続いた。「地方公演も『こんな状況でやっていいんか』とクレーム電話が来る。私はまず、『笑いこそ自己免疫力が高まりますよ。ここへ来て、ハハハと笑った方が免疫力を活性化するんですよ』というようなマクラを振ってからやっている。議連の中から、笑いは健康の源だよというような機運、空気をつくっていただきたい」。表情こそ柔和だが、言葉の端々に鬼気迫るものがのぞいた。

落語界への支援を呼び掛ける柳亭市馬師匠(左)と桂米団治師匠=20日、東京都内

 こうした訴えに、議連メンバーはどう応えたか。

 共産党の小池晃書記局長は「国が直接、支援する仕組みをつくらないといけない。議連がせっかくあるのに、コロナ禍に踏ん張っている現場の叫びに応えなければわれわれの存在意義が問われる」と発言。無所属の細野豪志元環境相も歩調をそろえた。議論は、文化芸術団体に対し、補助金を支給する文化庁の支援制度が十分に機能していないとして、より柔軟かつきめ細かい支援を要請していく流れになった。

 議連事務局長を務めるのは、大学時代は落語研究会の会長だった自民党の宮内秀樹衆院議員(福岡4区)。「(苦境が)いつまで続くか分からない。何百年と続く日本の伝統文化を消さないよう、落語は必要だと発信していかなければならない」と力を込める。与野党横断の議連だからこその一体感を感じさせた。

 東京、大阪などで31日までを期限とする緊急事態宣言は、感染力が強い変異株の拡大を背景に、延長が現実味を帯びている。文化芸術の公演活動も本来の形に戻れるのは遠い先-との不安が覆うが、落語界にかすかな光が差す話題もあった。

 5月、落語協会と落語芸術協会が、存続の危機にある都内5軒の演芸場の支援をインターネット上で募るクラウドファンディング(CF)を実施したところ、わずか4日間で目標金額の5千万円を超す浄財が集まったのだ。寄付金は、演芸場の寄席興行運営資金に充てられる。江戸の世から先人によって脈々と継がれてきた落語の生命力、市井の人々との紐帯(ちゅうたい)を示す朗報に、浅草演芸ホールの松倉由幸席亭も「はなし家と小屋側は運命共同体。日本人が心のよりどころとしている大衆文化、寄席演芸を含め、寄席芸人たちに一層の支援をいただければ」と意を強くした様子。

 20日の落語議連との意見交換後、米団治師匠は記者団に「この危機のおかげで、一つ一つの高座を大切にし、魂を込めてやることが大事ということも再確認した。寄席と全国津々浦々での地方公演の両輪で、切磋琢磨(せっさたくま)していきたい」と決意を語った。市馬師匠も、自らの活動がままならない中でも、後進育成の使命感をほとばしらせた。「新しい100年後の寄席を支える若手を育てていかないといけない。寄席がなくなったら育たない」

 さて-。

 私個人も文化芸術の公演は、最初の緊急事態宣言が出る前の昨年2月に福岡であったロックバンドのライブ以来、遠ざかってしまっている。落語にも興味があり、昨夏、東京支社報道部に赴任した当初は都内でぜひ、寄席に行くぞと意気込んでいたものの、お預けのままだ。

 私たち記者団とやりとりした師匠たちは「クラウドファンディング、2億ぐらいいくんじゃないですか? 気付いたら『市馬御殿』とか」(米団治師匠)などとユーモアにあふれ、取材しながら笑いが止まらなかった。

 文化芸術は心の癒やし、暮らしと人生に不可欠なもの。皆が苦しい今こそ、何とかはなし家や演者の思いに応え、共に守っていきたいと感じた。いつもの大笑いでなくとも、マスクのまま心で大笑いしてみる。いつもより高らかに喝采の拍手を演者に送ってみる。そんな文化芸術の「新しい観賞様式」を模索し、コロナ禍に立ち向かいたい。(郷達也)

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