「ただ読み」広げた漫画村 元運営者実刑でも漫画家に残る不安

 「使ってたなんて言えない」「見てた方も罪だよ」-。海賊版サイト「漫画村」の元運営者の実刑判決を受け、ネット上には書き込みがあふれた。漫画村が広げた「ただ読み」の風潮に、創作活動に励む漫画家は「罪が認められたのはいいことだが、抑止力につながるのか不安は残る」と語る。日本の漫画のデジタル化と海外進出が進む一方で、ネットには新たな海賊版が次々はびこる。専門家は「多種多様な作品を生み出す日本漫画の風土を脅かす」と警鐘を鳴らす。

 専用のタブレットにペンを走らせる漫画家タネオマコトさん(45)=北九州市戸畑区。「漫画の世界観を決めるのはペンだけ。キャラクターだけでなく、背景のごみ一つも手を抜けない」。漫画の創作現場は紙とペンからデジタル機器へと転換が進む。でも「一こま一こま、線一本にも思いを乗せて描いている。そこは変わりない」。

 大手出版社の漫画賞受賞を重ね、現在は電子コミックサイトでの連載を控えるタネオさん。海賊版に懸念するのは新たな発表の場への影響だ。紙の場合、掲載時の原稿料と単行本の印税で収入が得られる。電子コミックは、正規のサイトで読まれた回数が収入につながる形だ。その仕組みを海賊版が脅かしている。「ただ読みが罪悪感なく広がることに恐ろしさを感じる」

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 自作を気軽に会員制交流サイト(SNS)に掲載する描き手もいれば、出版社は新作を国内外に時差なく配信する。デジタル化は国境を超えた漫画人気を支える土台になった。北九州市漫画ミュージアムの表智之専門研究員は「漫画がデジタルでグローバルに広がる。正規市場も海賊版も背景は一緒だ」と指摘する。

 業界団体によると、最近は日本人向けの海賊版だけでなく、インドネシア語やベトナム語などに翻訳された違法サイトも存在するという。“クールジャパン”の代表として、高まる世界的な評価の裏側の現実だ。

 日本漫画の魅力は、王道の人気作からカルト的な作品まで「ずばぬけた多様性」(表研究員)にある。それを支えてきたのは、人気作が収益を上げ、新たな才能の挑戦の場をつくるという構造だ。海賊版が人気作の収益を下げれば、多様性が失われかねない。表研究員は「長い目で見れば漫画界には大きなマイナスだ」と訴える。

 海賊版の問題は運営者だけでなく、安易な気持ちで使う利用者側の問題でもある。「あしたのジョー」で知られる漫画家ちばてつやさんはブログでこう訴える。「海賊版によって漫画文化のともしびが消えかかっているのにお気付きください」 (梅沢平)

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