保険適用拡大、医療現場には懸念も 不妊治療巡り年明け詳細決定

 夫婦の5・5組に1組が経験しているとされる不妊治療。保険適用拡大は菅義偉首相が昨秋の自民党総裁選で打ち出し、今年1月の施政方針演説でも「来年4月スタート」を言明した。政府が昨年12月に示した工程表によると、日本生殖医学会などが今夏、診療のガイドラインを策定。年明けにも保険適用の詳細が決定される運びだ。

 現在の保険適用の対象は不妊の原因検査や卵管閉塞(へいそく)の治療など初期段階の一部に限られる。高度な治療となる体外受精と顕微授精は国や各自治体がそれぞれ助成。国は今年1月、助成額や回数の上限を引き上げ、所得制限も撤廃した。

 不妊治療は状態によって個別に内容を決める「オーダーメード」が一般的だ。現行の自由診療では各医療機関が治療方針や費用を設定している。厚生労働省の実態調査(2020年)によると、体外受精1回の平均費用は約50万円で、20万円以下から100万円近くまで大きな開きがある。

 横浜市立大産婦人科の倉沢健太郎准教授によると、医療技術の面でも医療機関によって医師の技能や、専門技術者や設備への投資規模など「千差万別」の状態で、保険適用により安全性や有効性が確認された治療の標準化が期待される。

 焦点は適用範囲や診療報酬の設定だ。北九州市のセントマザー産婦人科医院の田中温(あつし)院長は「保険適用で報酬が標準化されれば、医療機関が最先端の技術や設備に高額な投資を行う意欲は減退する恐れがある。蓄積した知識や技術が失われるかもしれない」と現場の停滞を心配する。倉沢准教授も技術格差の大きい不妊治療の特性から「現行の助成制度を充実させる方が現実的だ」と語る。

 不妊に悩む人を支援するNPO法人「Fine」(東京)の松本亜樹子理事長は保険適用によって助成金が廃止されることを懸念する。現在の保険の仕組みでは、保険適用が難しいとみられる最先端の診療と保険診療が組み合わされた場合は全額自己負担となるからだ。「かえって患者の負担が増す恐れもある。そうなれば本末転倒だ」として患者に不利益にならないような制度設計を求める。

関連記事

PR

開催中

秋の古本まつり

  • 2021年10月13日(水) 〜 2021年10月26日(火)
  • ジュンク堂書店福岡店 2階「MARUZENギャラリー」特設会場

PR