市長が売却拒否の馬毛島の市有地 政府が強制収用の臆測、地元は警戒

 米軍機訓練の受け入れ先として政府が大半を買収した鹿児島県西之表市の無人島・馬毛島を巡り、わずかに残る市有地を国が強制収用するのではないかとの臆測がささやかれている。島全域の基地化を目指す政府に対し、市は売却を拒む構えを崩さず、合意の糸口が見えないためだ。政府には過去、馬毛島の強制収用を検討した経緯もある。島での訓練を日米両政府が合意して10年。地元住民らは政府の動向に監視の目を光らせる。

 計画されているのは、米軍空母艦載機による陸上空母離着陸訓練(FCLP)。政府は2011年6月、島を受け入れ先として検討することで米政府と合意した。島のほとんどを所有する民間地権者との交渉は難航したが、19年11月に160億円で買収することで決着。防衛省は昨年夏時点で島全域(約8平方キロ)の99%を取得するめどを付けたと公表している。

 一方、馬毛島にはかつて人が住んでいた頃にあった小中学校跡地など、計約8900平方メートルの市有地がある。市には既に防衛省から買収の打診があったというが、騒音被害への懸念などを理由に「基地反対」を訴えて1月に再選された八板俊輔市長は、西日本新聞の取材に「売るつもりはない」と断言している。

 「政府は日米安保の重要性を盾に、強制収用に踏み切るのではないか」。市関係者によると、市内では最近、こうした声が聞かれるようになった。

 政府は訓練移転先としてだけでなく、島を自衛隊基地として整備し、海洋進出を強める中国を念頭に置いた自衛隊の防衛拠点としても活用する方針だ。市は国が強制収用に乗り出した場合の対応について、内部で複数回協議したという。

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 政府はかつて、長引く地権者との交渉にしびれを切らし、強制収用を検討した。その事実が地元に漏れ伝わっていることが、臆測につながっている。

 「強制収用の選択肢もある」。政府と地権者の間に入った政界関係者は19年夏ごろ、首相官邸の交渉担当者からこう告げられたという。当時、米トランプ政権から訓練受け入れをせかされた政府は、官房長官だった菅義偉首相が買収交渉の加速化に陣頭指揮を執っていた。政府筋は「防衛省に強制収用を勉強させた」と認める。

 検討されたのは、在日米軍が使う土地収用が可能な「駐留軍用地特措法」の適用だ。同法による収用は沖縄県外では4件しかないが、「米国との同盟の重要性を損なわないため、買収を急ぐ必要があった。適用に備えた研究を重ねた」と政府筋は振り返った。

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 市有地を強制収用する可能性はあるのか。防衛省は西日本新聞の取材に「根拠不明の臆測やうわさなので、コメントを差し控える」と明言を避けた。西之表市のベテラン市議は「民間相手に収用を検討したことがあるのに、なぜ根拠不明と言えるのか」と警戒心をあらわにする。

 馬毛島買収を巡っては、費用が不動産鑑定価格の3倍を超える高額となり、全額を国会審議を経ない財政法上の手続き「流用」で賄った。強引で不透明な政府の手法に、地元の不信感は根深い。

 同市でFCLPに反対する市民団体の三宅公人会長(68)はこう警告する。「住民が強制収用を疑う背景には、十分な説明をしない国への不信感がある。もし国が収用に踏み出せば、地元との関係は決定的に悪化する」  (湯之前八州、竹中謙輔、片岡寛)

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