どう守る、高齢者や障害者の「権利」 大事なのは意志の尊重

 高齢者や障害者など、自分の意思をうまく周囲に伝えられない人の権利と生活をどう守るか。それを考えるシンポジウム「高齢者・障がい者 権利擁護の集い」(日本弁護士連合会、兵庫県弁護士会など主催)が5月28日に開かれた。判断能力が十分でない人を支える仕組みには成年後見制度があるものの、権利が侵される恐れのある人は困窮者や虐待被害者など広範囲に及ぶ。集いでは、総合的な相談支援機関を地域に設ける必要性を確認した。 (編集委員・河野賢治)

 基調講演した佐藤彰一・国学院大法学部教授は、権利擁護の定義を「何らかの事情で自分の思いを伝えることができず、不利益を受けている人の生活を回復すること」と説明した。対象として挙げたのは高齢者や障害者だけでなく子どもや女性、性的少数者、生活困窮者ら。鍵は「本人が意思を伝え、それを支援すること」で、本人の伝え方が弱いなら、伝え方をサポートできる環境づくりが大切とした。

 当事者をどう理解して支えるかは、世界でも考え方に変化が出ているという。

 よく知られるのは、本人の判断能力を不十分とみなすと、福祉関係者が代わりに生活に関する判断をする「代行決定」。一方、国際的には「どんなに重い認知症患者でも、その人なりの思いがある。支援さえあれば本人なりの決定ができる」とする「能力存在推定」がより重視されていると報告した。これに基づくのが「意思決定支援」と呼ぶ援助の方法という。

 ただし、本人に自分の意思を伝える能力があっても、周囲が真意をつかめなければ意思決定支援はできない。佐藤教授は、このケースで代行決定をする際の条件として「支援者側は、本人の意思を確認する能力が自分にないことを自覚し、同時にそれを他の人に説明できること」を挙げた。

 国は現在、成年後見制度の利用促進策として、市民から相談を受けて利用に向けた調整をする「中核機関」を各市町村に設ける方針を示している。佐藤教授は日本などが批准する障害者権利条約を巡り、国連が英国やドイツに代行決定を排除するよう勧告していることを報告し、「中核機関を担う人は、能力存在推定を理解できている必要がある」と呼び掛けた。

 その上で、権利擁護の仕組みは地域全体でつくる必要があると強調した。成年後見制度は手段の一つであり、権利や生活が守られていない人の対応は、法律の専門家の担当分野にとどまらないためで、中核機関は成年後見制度をはじめ、全ての福祉サービスに目配りして運営することが望ましいという。

 佐藤教授は「大事なのは本人が地域の中で生きていける仕組みづくりで、要は権利擁護とは地域づくり。相談支援の中核となる機関を、その視点でつくる必要がある」と指摘した。

 シンポジウムは新型コロナウイルス感染拡大を受け、オンライン形式で実施された。

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