九州のラーメン師が「麺の本場」中国に挑んだ

 麺の本場・中国に、日本のラーメンを売り込む鍵は―。福岡や熊本を中心とする七つのラーメン店が4~5月、中国江蘇省南京市に1カ月限定で初出店した。新型コロナウイルスの抑え込みに苦戦する日本では店舗の営業もままならぬ中、人口14億人の巨大市場で「自分たちのラーメンが受けるか」を探る挑戦だった。ラーメン師たちには、どんな期待や課題が見えたのだろうか。

塩分に敏感、スープはぬるめが好み

 出店先は南京市内の園芸博覧会場に特設されたフードコート「拉麺(ラーメン)道場」。日中の往来制限が続く中、出店者たちは中国入国後に3週間、帰国後に2週間の隔離生活を覚悟の上で現地入りした。

 「ホウテン食堂」(福岡)の井上太一さん(51)は当初、看板料理の中華そばを本来のレシピで提供したが「しょっぱ過ぎる」という思わぬ反応が返ってきた。「中国の人々は塩分に敏感で、スープはぬるめが好みだと知った」と井上さん。塩分を少なめに、具材や麺の量を多めにアレンジ。「中国人の豚骨好きを再認識したけれど、しょうゆラーメンもおいしく召し上がっていただけた」という。

大勢の中国人客でにぎわった「拉麺道場」の会場

 みそラーメン店「はや川」(同)の谷口しんさん(41)も、通常通りみそ3種と17種類のスパイスを使うと濃厚過ぎるため、それぞれ種類を減らして味を調整。中国では時間をかけて麺類を食べる人が多いと分かり、ゆで時間も短くした。

 福岡―南京間は、福岡―東京間と同じ約千キロ。ただ、出店者たちは味やスープの温度、量の好みが日中で異なることを実感し、試行錯誤を重ねた。その結果、1杯60元(千円)ほどのラーメンを会場全体で計3千杯売り上げる日もあった。

 谷口さんは「中国の人々は思っていた以上に親日的。必ず再訪して中国の市場に挑みたい」と話す。

徹底した「ゼロコロナ」対策

 各店とも食材は中国国内で調達できたという。ただ、交通事情でその到着が遅れたり、会場の電気やガスが止まったりというトラブルにも見舞われた。

 「博多ラーメン 二代目けんのすけ」(福岡)の北村和也さん(42)は「中国では計画通りにいかないことが多いと実感した。ただ、現地で雇用したアルバイトはよく働く。接客態度は日本ほどではないが、日本の方が過剰接客かもと思うようになった」と振り返る。

 北村さんが特に強く感じたのは、中国のコロナ対策の徹底ぶりだ。「日本はウィズコロナ(コロナと共に)と言っているが、中国は徹底した封じ込めでゼロコロナを目指している。日本の対策の緩さが心配になった」。緊急事態宣言下の福岡では、経営する6店のうち4店が閉店を余儀なくされており「中国での出店が現実的な選択肢になった」と語る。

 中国では近年、健康志向が高まっている。「とまとラーメン専門店red」(熊本)の瀬戸山智昭さん(37)は、トマトラーメンが予想を上回る人気を集めたことに手応えを感じた。「上海から来てくれたお客さんもいて驚いた。投資家からも本格的な出店への声が掛かった」と話した。

上がる原材料費「豚は日本より高い」

 一方で、中国での飲食業展開は、従業員教育や資本関係など難しさもある。今回の出店者で唯一、中国での事業経験がある「中洲川端きりん」(福岡)の前村賢一さん(49)は「中国では人件費も原材料費も上がっていて、昔ほど利益は出ない。豚の原価も日本より高い」と指摘する。

一蘭の「味集中カウンター」

 「一蘭」(福岡)は今回、隣席との仕切りがある「味集中カウンター」を設け、日本の店舗で家庭用に販売する豚骨ラーメンを調理して提供。6月には上海に初の中国法人を設立し、物販事業や催事出店に取り組む。国内外の物販事業責任者の新井悠馬さん(36)は「今のところ飲食店の出店は視野に入れず、電子商取引(EC)サイトでの展開も視野に巨大な中国市場の調査をする」と明かした。

(南京で坂本信博)

 日式拉面 中国では日本のラーメンは「日式拉面」と呼ばれ、北京や上海などの大都市を中心に人気を集めている。熊本発祥のラーメンチェーン「味千ラーメン」は1996年に香港に初出店し、現在は中国各地に625店を展開。博多ラーメン「博多一幸舎」は中国本土で12の系列店を営んでいる。

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