党首討論 国民の疑問になぜ答えぬ

 かみ合わぬやりとりに暗然とさせられる。与野党の党首同士の「討論」とは、お世辞にも言い難い内容だった。

 国会はきのう2年ぶりの党首討論を開いた。私たちも今国会での開催を強く求めてきた。菅義偉首相にとって初の舞台であり、注目した国民も少なくはなかっただろう。

 新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言が出され、予定される東京五輪の開会式まで残り1カ月半という時期での開催である。こうした状況下で五輪を強行する理由は何か、懸念される感染拡大を防ぐ具体策は何か。野党の党首たちが発した問いは、多くの国民が知りたいと望んでいることでもある。

 首相は感染対策の「切り札」と位置付けるワクチン接種の取り組みを力説する一方、野党側の主張への反論などに時間を費やし、問われた点に正面から明確に答えることはなかった。

 国会審議などで繰り返し、批判を浴びた「安全安心な大会の実現に全力を尽くす」との言葉は封印したが、代わりに持ち出したのは唐突ともいえる思い出話だった。高校生だった1964年の東京五輪で見た女子バレー「東洋の魔女」やマラソンのアベベ選手らの記憶である。

 首相個人の言葉で語ろうという狙いだったのかもしれない。けれども論点をずらしている印象は拭えず、結びの言葉も「今の若者に希望や勇気を伝えたい」という精神論にとどまった。

 国民の多くは、コロナ禍が収束しないまま五輪が行われようとしていることに懸念を抱いている。政府のコロナ対策分科会の会長も同様の警鐘を鳴らす。いま首相がすべきは懸念の解消に十分な説明である。

 ところが、注目の党首討論という絶好の場で、首相が語る言葉を持ち合わせていない。極めて残念な現実である。このまま五輪に突き進むことに、やはり危惧を覚えざるを得ない。

 野党は複数の党首がコロナ対策の補正予算を取り上げた。重複感があり、答弁も深まらなかった。連携のまずさは否めず、近づく総選挙を意識してアピール先行の思惑が透けた。

 論戦が充実しない要因の一つに、野党が多極化し、持ち時間が細切れとなっていることがある。全体で45分という時間の延長を検討すべきだが、定期的な開催を定着させられれば、複数回を見通して野党で持ち時間を調整する余地もあろう。

 党首討論がいつあるかも定まらず、国会会期末の「通過儀礼」のように扱われる現状をまず改善しなければならない。党首同士が定期的に相まみえて互いの政策を競ってこそ、政治家の言葉も磨かれるのではないか。

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