介護施設の感染 「弱者」救済へ対策拡充を

 新型コロナウイルス禍の中で「感染弱者」とされる人々への支援が行き届かず、悲劇が繰り返されている。深刻な現実が数字で裏付けられた。

 全国の介護施設で昨年1月以降、少なくとも入所者9490人がコロナに感染し、486人が死亡していた。共同通信が都道府県、政令市、中核市、東京23区の計152自治体を対象に今年5月上旬までの累計数を尋ねた調査で明らかになった。

 1年前の同様の調査時に比べて感染者数は約20倍に膨らんでいる。列島全体での実数はこれをさらに上回るはずだ。政府は感染の原因、経路などを含めた詳しい調査を進め、いま一度対策の徹底を図るべきである。

 介護施設では昨春からクラスター(感染者集団)が次々に発生し、対策の難しさが指摘されてきた。集団生活は感染リスクが高く、通常でも人手を要する介護現場のコロナ対策には重い負担を伴うからだ。

 今回の調査によると、感染が確認された施設は1285カ所に及び、九州を含む46自治体で入院が必要な患者が施設にとどまり療養した事例もあったことが分かった。多くの現場で十分な対策に手が回らず、コロナ禍による病床逼迫(ひっぱく)のしわ寄せを受けた実情もうかがわれる。

 政府は各地でのクラスター事例を公表しているものの、施設での感染を綿密に把握する作業は行っていない。自治体の中には今回の調査に、データを「未集計」「非公表」と回答したところもあった。実態はさらに厳しいものと考えざるを得ない。

 政府は施設職員の感染検査やワクチン接種の促進に加え、療養者がいる場合に支援金を給付する方針を先月打ち出した。これらの前提として本来は、施設の感染実態をつぶさに調べ、現場に即した対策の在り方を探る作業は欠かせないはずだ。

 クラスターが多発する中、施設職員には差別や偏見の目が向けられ、介護職離れにも拍車がかかっている、と指摘される。かねて問題視されてきた賃金水準の低さなど待遇面の改善を図り、人材を育成、確保していく取り組みも急務だ。

 菅義偉首相は緊急事態宣言の再延長に当たり、従来の感染防止策とワクチン接種加速の「二正面作戦」を掲げた。それが仮に順調に進んだとしてもコロナとの闘いは続く。変異を繰り返すウイルスに対するワクチンの持続効果は未知数だ。肝心の治療薬は開発途上である。

 問題は介護施設の感染に限らない。これまでの対策の一つ一つを丁寧に検証し、長期的な視点で立て直しを図ることこそ肝要だ。政府にはそうした地道な取り組みを重ねて求めたい。

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