「痛かったね。どうしたの」子どもの自傷、コロナ下の増加

 新型コロナウイルス禍で生活環境が変化し、心のバランスを崩す子どもが増えている。九州のある公立中では新学期に入り、生徒10人がリストカットや薬を過剰摂取したことが確認された。現場の教員は「把握できているのは氷山の一角」と見守りを強める。専門家は「ストレスを吐き出すために自らを傷つけている」として、子どもが発する言葉や行動に心を配るよう警鐘を鳴らす。

 「生徒の自傷行為が後を絶たない」。九州の公立中の養護教員は訴える。

 「手首を切るのがやめられない」といった相談が増えたのは、昨春の一斉休校明けから。学校で処方薬を過剰摂取し、救急搬送されたケースもあった。生徒からの相談で、別の生徒が自ら刃物で傷つけた手首の写真を会員制交流サイト(SNS)に投稿していることも分かった。

 「痛かったね。どうしたの」。保健室を訪れる生徒に養護教員は尋ねる。「家族のことで悩んでいる」「友達とうまくいかなくて、いらいらした」。さまざまな声が聞こえてきた。「生きるためにしている」と話す子もいた。「怒らないから手当てさせてね」「またやりたくなったら、その前に話を聞かせて」。養護教員は懸命に寄り添おうと努める。

 学校現場で教員たちは、生徒が悩みや気持ちを打ち明けやすい環境づくりを心掛ける。保護者と連絡を取り、必要であれば医療機関とも連携する。「どうしたらいいのか」。試行錯誤し、常に葛藤を抱える。

   ◆    ◆ 

 厚生労働省によると、全年代の年間自殺者数は近年減少傾向にある一方、小中高生の自殺者は増えている。昨年は499人と、統計のある1980年以降最多だった。原因や動機として学業や進路、親子関係などの悩みが多かった。

 自殺の予防教育に取り組む中央大人文科学研究所の高橋聡美客員研究員は、心身ともに制限されるコロナ禍の社会で「ストレスをうまく解消できない子どもは増えている」と分析。「自傷で気分がすっきりすると話す子は多い。繰り返すと自殺につながる恐れもある」と懸念する。

 周囲の接し方について、高橋客員研究員は自傷行為そのものではなく、まずは本人に関心を向け、否定せずに話を聞くことが重要という。「自傷は、つらいけど生きていたいというメッセージ。丁寧に話を聞き、共感してくれる人がいるだけで自傷は減る」

 勉強や部活動、塾に加え、友人とのSNSのやりとりなど早朝から深夜まで、緊張に包まれた生活を送る子は少なくない。高橋客員研究員は「朝日を浴びてご飯を3食しっかり食べる、スキンシップをとることは抗うつ作用がある。何げない日常を大切にして、心の健康を維持してほしい」と呼び掛ける。

 (小林稔子)

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